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インドネシア語新聞翻訳
2010年3月15日(月)
【レプブリカ紙】
貧困がテロの引き金となる
【ジャカルタ】
サリム・セガフ・アル・ジュフリ社会大臣は、インドネシアでテロが増えている主な要因の一つは貧困にあると語った。「貧困はテロ、家庭内暴力、そして社会不安など諸問題の根源になる」と同大臣は3月15日(月)バリのデンパサールで「希望ある家族プログラム」を発足させるにあたって述べた。
貧困問題の解決には長い時間を必要とする。政府は貧困層の人口を毎年1%ずつ下げていくことを目標としている。希望としては第2期ユドヨノ政権の終わりには貧困住民の数を10%以下に抑えることだ。
中央統計局によると、2009年3月現在、貧困線未満で生活している住民の数は3250万人に達している。この数字は2008年3月の3496万人からは下がっている。
この数字には貧困線上にある住民の数を計算に入れていない。貧困線とは中央統計局が引いた貧困グループの境界線であり、2009年3月では月収20万262ルピア(約2,100円)になる。
元国民協議会議長ヒダヤット・ヌル・ワヒド氏は、テロを貧困のせいだけにせず、テロ撲滅のための包括的な政策を立てるよう政府に要請している。国民議会安全委員会のメンバーである彼は、テロ問題の根源は極めて多元的だと考えている。「貧困が唯一の要因ではない。これだけに焦点をあてるべきでない」と同氏は述べている。
彼は、人が過激になり、やがてテロリストになるには多くの要因があると述べている。それは教育であり、貧困を含む社会問題であり、ウラマ(訳注1)と活動家の関係がしっかり築かれていないことだ。
貧困は人のものの見方を狭くし、怒りやすくし、影響を受けやすくなる。過激化という点でみると、貧しい人は世間で自分が欲しているものが手に入らないため過激になる。「彼らは現世を楽しむことが出来ないため、天国へ早く行ける扉をちらつかされて引き込まれるのだ」と彼は述べた。
平和記念碑財団のヌル・フダ・イスマイル理事は、貧困問題がテロの主な要因になるということに同意していない。彼は米国が指名手配しているテロリストの首領ウサマ・ビン・ラディンを例に挙げている。ウサマは中東で最も裕福な事業家の家族の一人であり、高等教育を受けている。
アザハリ博士とヌルディン・トップ(訳注2)の二人についても同様だ。二人とも中流家庭の出身で高等教育を受けており、ぎりぎりの生活をしていたわけではない。「もし貧困が主な要因であれば、アフリカの人たちがテロリストになっているはずだ。インドネシアであれば貧しい地域からでるべきである。しかし、そうではないだろう」と彼は語った。
テロリストになった貧困層の人がいたとしても、彼らは実行者になっただけだと同氏は考えている。それに対し、テロ活動の頭脳になっているのは裕福な人たちだという傾向がある。
テロリズム思想は貧困以外に教育を通じても広がる。とくにイスラームをベースとした教育だ。スルヤダルマ・アリ宗教大臣がイスラーム教育機関に対して、テロリズム思想に染まらぬよう繰り返し警告している理由もここにある。
「イスラームは暴力的方法による闘争は説いておらず、テロリズムには反対している。一方、テロリズムは罪のない人の命を奪うことも含め、あらゆる方法をありとしている」と宗教大臣はマゲラン〔中部ジャワ州〕で述べた。
政府は、囚人に対する宗教と反テロリズムの教育プログラムを強化していると説明した。テロリスト受刑者が平和なイスラームの教えに立ち戻ることができるために、宗教教育プログラムは重要だ。「理想的には、彼らは(イスラームの教えに)戻るべきだ」と宗教大臣は述べた。
射殺するな
国民議会第三委員会のナシル・ジャミル(法務)委員は、西側諸国、特に米国が提唱しているテロ撲滅計画に政府は批判的に接するよう要請している。同委員は、インドネシアは自国のテロリズム撲滅に対して独立性を示すべきとの意見だ。米国やオーストラリアからの報奨金につられてはならない。
情報活動評論家のディノ・クレスボン氏は、政府のテロ撲滅予算をまだ他国に頼っている間は独立性を示すのは難しいだろうと考えている。予算がなく、外国の援助に頼っているだけならば政府は最善を尽くしているとは言えない。スリ・ムルヤニ財務大臣はこの予算の優先性を理解すべきだ、と彼は語った。
2009年3月貧困住民地図
政府は貧困をテロリズムおよびその他の社会問題の引き金となる主因の一つだと指摘している。2009年3月の中央統計局のデータに基づくと、インドネシアには3,250万人の貧しい人々がいる。彼らは生活のために月に20万262ルピア(約2,100円)しかあてがない。政府はテロ問題に包括的に対処することが求められている。貧困のせいにするだけでなく、教育、過激主義イデオロギー、そして超大国からの圧力に対する政府の毅然とした態度といった他の要因も見る必要がある。
アチェ州 : 892,860人
北スマトラ州 : 1,400,000人
西スマトラ州 : 429,250人
リアウ州 : 527,490人
ジャンビ州 : 249,690人
南スマトラ州 : 1,000,000人
ベンクル州 : 324,130人
ランプン州 : 1,500,000人
バンカ・ブリトゥン州 : 76,630人
リアウ諸島州 : 128,210人
ジャカルタ特別州 : 323,170人
西ジャワ州 : 4,900,000人
中部ジャワ州 : 5,700,000人
ジョグジャカルタ特別州 : 585,780人
東ジャワ州 : 6,000,000人
バンテン州 : 788,070人
バリ州 : 181.720人
西ヌサトゥンガラ州 : 1,000,000人
東ヌサトゥンガラ州 : 1,000,000人
西カリマンタン州 : 434,770人
中部カリマンタン州 : 165,850人
南カリマンタン州 : 175,980人
東カリマンタン州 : 239,220人
北スラウエシ州 : 219,570人
中部スラウエシ州 : 489,840人
南スラウエシ州 : 963,570人
南東スラウエシ州 : 434,340
ゴロンタロ州 : 224,620人
西スラウエシ州 : 158,230人
マルク州 : 380,010人
北マルク州 : 98,000人
西パプア州 : 256,840人
パプア州 : 760,350人
訳注
1) ウラマ: イスラームの宗教指導者、法学者
2) アザハリ博士とヌルディン・トップ: 両者ともイスラーム過激派の東南アジア組織ジェマー・イスラミアの幹部でマレーシア国籍。バリ島爆弾テロなどインドネシアで起きた一連の爆弾テロの首謀者と見られている。アザハリは博士号を持つ爆弾製造の専門家で、2005年東ジャワ州で警察との銃撃戦で死亡。ヌルディン・トップは2009年中部ジャワ州でやはり警察との銃撃戦で死亡した。
(翻訳者:山本肇)
(記事ID:ec1003151hy)
原題:Kemiskinan Picu Terorisme
http://koran.republika.co.id/koran/14/106234/Kemiskinan_Picu_Terorisme
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