インドネシア語新聞翻訳
2009年11月26日(木)
【レプブリカ紙】


インドネシア銀行:シャリア銀行の3つのシナリオ

【ジャカルタ】
 〔インドネシアの中央銀行である〕インドネシア銀行は、2010年のインドネシアにおけるシャリア銀行(訳注1)の発展を見込んだ3つのシナリオを準備した。このことはシャリア銀行の発展をさらに促進するために行なわれた。インドネシア銀行のシャリア銀行業研究・開発・調整局のムルヤ・シレガル局長はそのように述べた。

 同局長によれば、その発展の3つの予測とは悲観的、中程度、そして楽観的シナリオだという。

 悲観的シナリオでは、〔2010年での〕資産72兆ルピア(約7,200億円)を予測しており、よって20%に達するシャリア銀行の成長〔率〕を見込んでいる。このことは有機的成長(訳注2)パターンと、国内および世界経済が回復するという期待に裏付けられている。そしてシャリア銀行業の実績向上を推進すると期待されている、付加価値税に関する2009年法律第42号ができたことも裏づけの一つだ。

 「また、国民の教育と銀行の販売促進の成果も期待されるからだ」水曜日(11月25日)にシャリア銀行セミナーにおいて、同局長はそのように述べた。

 第2のシナリオは中程度のシナリオだ。このシナリオでは〔2010年での〕資産97兆ルピア(約9,700億円)を予測しており、よって43%に達するシャリア銀行の成長〔率〕を見込んでいる。

 悲観的なシナリオの予測に加えてこの第2のシナリオでは、全国のシャリア銀行業における新しい投資企業の参入も期待されている。新しいシャリア銀行の創設もしくは既存のシャリア銀行への経営参加を通じて、その参入が可能だ。質量の両面から人材需要の充足〔状況〕が改善されることも〔このシナリオでの〕裏づけの一つだ。

 同局長は次のように付け加えた。最後のシナリオは楽観的なシナリオで、資産124兆ルピア(約1兆2,400億円)を予測しており、よって70%に達する成長率を見込んでいる。悲観的および中程度の予測に加えて、インドネシアのシャリア銀行発展のために〔行なわれる〕さらに有効な規制やインセンティブ施策などの裏づけに基づいて、この状況は予測される。

 同局長によれば、インドネシア銀行自身、2009年のシャリア銀行の発展についての楽観的な予測計画において、資産成長率75%で得られる総資産を87兆ルピア(約8,700億円)に設定していたことがあった。しかし、実際に2009年9月現在のシャリア銀行統計データで伝えられた情報によれば、シャリア銀行の総資産はいまだ59兆ルピア(約5,900億円)だ。この総資産はシャリア普通銀行(略称BUS、訳注3)、シャリア事業体(略称UUS、訳注4)、そしてシャリア庶民融資銀行(略称BPRS、訳注5)の資産を合わせたものだ。

 「したがって2009年〔に出された〕シナリオの中で最も起こる可能性が高いのは、悲観的シナリオだ。最も現在の状況に即しているからだ」と同局長は述べた。

 シャリア銀行業の発展促進問題が2008年前半に頭をもたげたことがあったが、現実には〔市場占有率〕5%の目標に対していまだ喜ばしい実績を見せていない。2008年12月から2009年10月までのシャリア銀行の資産成長は、仔細に見ると〔月〕平均して1兆ルピア(約100億円)を上回る程度だ。2009年10月までのシャリア銀行の資産成長率は28.9%(年単位)であり、確かにペースが落ちている、と同局長は述べた。

 「いずれにしても世界的な〔金融〕危機もシャリア〔銀行〕に波及的影響を与えている」とし、同局長はさらに述べた。

 したがって現在向き合うべきことは、シャリア銀行業務の増加がもたらす影響だ。その増加により自動的に人材の需要も高まるという。「その件についてもシャリア銀行は配慮するべきだ」

 その他にインドネシア銀行が行なうべきことは、シャリア銀行を管理する規制とインフラの質の改善だ。付加価値税の存在に関連して、海外投資企業からの資金の流れが急速に拡大することも期待されている。したがって〔投資企業からの〕需要が高まるならば、インドネシア銀行もその許可について厳重に行うつもりだ。

 しかしその前にシャリア銀行がまず準備するべきことがあるという。つまり市場はむしろ国内であるから、海外での支店開設に活動的である必要はない。したがってサービスの質は国際的にも通用するものでなければならない。

 「〔サービスの質は国際的にも通用することを〕望む望まないに関わらず、我々は傍観者になってはいけない」
【Yasmina Hasni.Ed:Yeyen 記者】

悲観的から楽観的まで
*悲観的シナリオ
予測:シャリア銀行の20%に達する成長率と資産72兆ルピア(約7,200億円)
裏づけ:有機的成長パターンと国内および世界経済の回復

*中程度シナリオ
予測:シャリア銀行の43%の成長率と資産97兆ルピア(約9,700億円)
裏づけ:有機的成長パターンと国内および世界経済の回復に加え、全国のシャリア銀行業における新しい資本企業の参入、および質量両面からの人材需要の充足〔状況〕の改善

*楽観的シナリオ
予測:70%に達する成長率と資産124兆ルピア(約1兆2,400億円)
裏づけ:有機的成長パターン、国内および世界経済の回復、そして全国のシャリア銀行業における新しい資本企業の参入、および質量両面からのよい人材需要の充足〔状況〕の改善に加え、インドネシアでのシャリア銀行の発展のために行なわれる、さらに有効な規制とインセンティブ施策
【情報提供:セミナー】


訳注
1) シャリア銀行: イスラーム法に則って業務を行う銀行で、利子の徴収は認められないなどの特徴を持つ
2) 有機的成長: 合併・買収などではなく、組織自身の力を向上させることによって企業の成長を目指すこと
3) シャリア普通銀行: 全面的にイスラーム法に則った銀行。ここでいう「普通」とは、インドネシアにおいて県(kabupaten)レベル以上の規模で業務を行っている銀行のことで、郡(kecamatan)や村(desa)レベルでの小規模な信用金庫や組合、講よりも大きく、地域的普遍性があるという意味で、「普通」という言葉が使われる。
4) シャリア事業体: 在来型銀行の傘下にあるシャリア事業体
5) シャリア庶民融資銀行: 庶民、中小企業を相手とするイスラーム系の小口融資機関

(翻訳者:川名桂子)
(記事ID:ec0911262kk)

原題:BI: Tiga Skenario Bank Syariah
http://republika.co.id/koran/17/91905/BI_Tiga_Skenario_Bank_Syariah



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