インドネシア語新聞翻訳
2009年11月11日(水)
【レプブリカ紙】


シャリア市場占有率、5%を上回る可能性

【ジャカルタ】
 国民議会で既に可決された〔シャリア銀行のムラーバハ融資において課されてきた二重の〕付加価値税に関する法律の改正案〔後述〕は、インドネシアのシャリア銀行(訳注1)の市場占有率を拡大させる引き金になると確信されている。カリム・ビジネス・コンサルティングのアディワルマン・A・カリム代表取締役は、シャリア銀行のマーケット・シェアが2010年に5パーセントを上回るという楽観的な考えを明らかにした。

 「2010年にはシャリア銀行の発展の見通しはさらに明るく、付加価値税に関する法律〔の改正〕ならびに今後分離新設される〔シャリア〕銀行が多いことから、市場占有率は5%を上回る可能性がある」先週月曜日(11月9日)にインドネシア大学の経営学修士プログラム・オープニング式典の合間に、同代表取締役はそう述べた。

 同代表取締役は1兆ルピア〔約100億円〕の資本で登場したバンク・ラヤット・インドネシア・シャリア普通銀行(訳注2)の存在を例に挙げた。その数字は1年以内に12.5倍に伸びることが予測される。そのことは、十分に広いネットワークを持つことから、バンク・ラヤット・インドネシア・シャリア(BRIシャリア、訳注3)が1ヶ月におよそ1%も成長し、資本回転〔率〕が大きいことを意味する。

 一方、シャリア経済アナリスト兼インドネシア・ムアマラット銀行社長でもあるA・リアワン・アミン氏は次のように述べた。シャリア銀行のマーケット・シェア5%の目標は、シャリア事業部門(UUS)の分離新設だけでは達成されないだろう。銀行の分離新設と合併には十分に長い時間を要するからだ。

 「従来型銀行(訳注4)の資産が段階的にシャリア〔銀行〕に移行されれば、マーケット・シェアの目標を達成できる」とリアワン氏は述べた。

 またシャリア銀行業を発展させるためには、政府の支援が推進されるべきだ。一方、シャリア銀行の人材については、さらに強化されると非常によい、とリアワン氏は述べた。しかし、今いる人材がシャリア銀行を停滞させる要因となっているわけではない。

 「基本的にはシャリア銀行〔へ〕の人材の移動は認められている。したがってシャリア銀行はみずから次代指導者を育成するべきだ」とし、リアワン氏はさらに次のように述べた。

 マネージャー・レベルの人材の需要については、実際にはそれほど難しいことではない。「従来型銀行から管理職を連れてきて、早急に学ばせることはできないのだろうか? シャリアの知識と技能はすぐに学ぶことができる。しかし難しいのはイスラーム的な姿勢を持つことだ」

 一方、アディワルマン代表取締役は次のように述べた。マーケット・シェアを拡大するためには、シャリア銀行の人材〔確保〕は直ちに予測されるべき課題の一つとなる。したがって手が打たれなければ、インドネシアのシャリア・ビジネスの労働需要を満たす上でのヘッド・ハンティングが起こるに違いない。差し迫っているシャリア銀行の人材需要に応えるには、他の銀行からシャリア銀行員を連れてくるか、従来型銀行の銀行員をシャリア銀行向けに訓練するべきだ。

急成長
 当初はたったの30%前後と予測されたシャリア銀行の成長〔率〕は、2010年には40-50%になることが予測される。インドネシア・シャリア銀行協会のバンバン・ストゥリスノ事務局長は、いくつかの新しいシャリア銀行の登場でその成長〔率〕は実現する可能性が高いとし、さらに付け加えた。また今年のシャリア銀行ネットワーク拡大により、資産の成長も後押しされる。

 「以前は合併の途上にあった新しいシャリア銀行の存在で、今年は資産が60兆ルピア〔約6千億円〕に達し、来年2010年にはさらに急速に最大限に成長する、と私は楽観的に考えている」火曜日に(11月10日)に同事務局長はそのように述べた。

 同事務局長はさらに述べた。インドネシア・シャリア銀行のマーケット・シェアの割合はいまだ5%に達しておらず、トルコもしくはマレーシアでのシャリア銀行のマーケット・シェアと比較すると確かに小さい。

 「しかしこの付加価値税に関する法律の修正案の存在で、外国投資を招き入れることが可能になり、そのことは直接ではないがシャリア銀行の「市場占有率」を拡大することに繋がるだろう」

 現在シャリア銀行の市場占有率はおよそ2.3%だ。2008年にはシャリア銀行の資産の成長率は36.9%で総資産は49兆8千億ルピア〔約4,980億円〕となった。2009年の9月までにシャリア銀行の資産はすでに58兆ルピア〔約5,800億円〕に達した。
【Yogie Respati/ed/yeyen記者】

シャリア銀行の市場占有率
 *当初シャリア銀行は2008年には市場占有率5%の目標を設定していた。この期待は消えた。現在の市場占有率は2.3%に達したばかりだ。当初の期待は2015年には15%に達することだった。

 *付加価値税の改正案は去る9月16日に可決された。

 *付加価値税の改正案で、シャリア原理を利用した融資およびその他のシャリア商品における二重課税が廃止される。(訳注5)

 *通常二重課税が行なわれるシャリア商品の中にはムラーバハを利用した商品がある。これは銀行サイドがある財物を購入し、後に合意されたマージンを原価に加えて顧客に転売する〔形態の〕取引だ。

 *人材〔確保〕は常に市場占有率を拡大する上での課題の一つとなっている。

シャリア銀行資産(単位:兆ルピア)

 2008年 49.8 --- 2009年 58


訳注
1) シャリア銀行: イスラーム法に則って業務を行う銀行で、利子の徴収は認められないなどの特徴を持つ。

2) シャリア普通銀行: 全面的にイスラーム法に則った銀行。ここでいう「普通」とは、インドネシアにおいて県(kabupaten)レベル以上の規模で業務を行っている銀行のことで、郡(kecamatan)や村(desa)レベルでの小規模な信用金庫や組合、講よりも大きく、地域的普遍性があるという意味で、「普通」という言葉が使われる。

3) バンク・ラヤット・インドネシア・シャリア(BRIシャリア): バンク・ラヤット・インドネシア(BRI)は1895年に創建された民族系の銀行で、独立後の1946年にインドネシア初の国営銀行となる。1992年株式会社化されたが、株式の100%を政府が所有している。その名の通り(直訳すればインドネシア国民銀行)庶民相手の金融に重点をおいている。BRIシャリアは、BRIからイスラーム法に則ったシャリア銀行業務部門を分社化したもの。

4) 従来型銀行: イスラーム式ではない、有利子で業務を行っている銀行。つまりイスラーム式という「新型」に対する、昔からある有利子で行う「従来型」の銀行のこと。

5) 有利子銀行の場合、例えば顧客が自動車を購入する際の融資は、顧客が自動車販売会社から自動車を購入する際の資金を貸し付けるものであり、売買は自動車販売会社と顧客との間で行われ、その際に付加価値税(日本では消費税)が課される。これに対してシャリア銀行の場合、イスラーム法によって融資の際の利子が認められないため、まずシャリア銀行が自動車販売会社より自動車を購入する。そしてシャリア銀行は、買い取り価格にマージン(利鞘)を上乗せした価格で、借り手に再販売を行う。この結果、シャリア銀行のムラーバハ融資では、自動車販売会社・シャリア銀行間、およびシャリーア銀行・顧客間で2回売買が行われることになるため、付加価値税が2回課税されることになる。このため顧客から見れば、有利子銀行からの融資よりもシャリア銀行からの融資の方が負担額が高くなる。このことが、シャリア銀行の競争力を落とす要因とみなされており、本記事においてはシャリア銀行の市場占有率の低さの原因であると論じられている。そこでインドネシア議会は、付加価値税に関する法律を改正し、ムラーバハ融資においては付加価値税をこれまでの2回から1回のみ課すこととした。


(翻訳者:川名桂子)
(記事ID:ec0911111kk)

原題:Pangsa Pasar Syariah Bisa Lampaui 5 Persen
http://www.republika.co.id/koran/17/88510/Pangsa_Pasar_Syariah_Bisa_Lampaui_5_Persen



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