2007年9月26日(水)

直ちに二重課税を廃止せよ

まずは政令や大蔵大臣令などの暫定法でも可

【ジャカルタ】
 インドネシア銀行(BI)は、シャリア銀行取引(注1)に対する二重課税(注2)扱いを廃止するための暫定法を発令することを政府に要請した。二重課税の廃止が盛り込まれる予定の修正付加価値税法案の可決を待つ間に、この暫定法をすぐに出す必要がある。「新しい税法が可決されるまでの移行期間中、二重課税をなくすための暫定法が発令されることを期待する」とインドネシア銀行のシャリア銀行業部門の役員、ラムジ A ズーディ氏は9月25日(火)に発言した。

 ラムジ氏によると、シャリア銀行業のより速い発展を促すためには、移行期間中の暫定法発令が重要だ。またその法令によって、外国資本、特に中東の投資家をインドネシアに誘致することができる。二重課税が廃止されていないため、外国投資家の多くがインドネシアに資本投下する計画を延長せざるを得なくなっているのだ。

 ラムジ氏は、二重課税を廃止する法令は、どのような形であってもよいと言う。最も重要なのは、法令が二重課税を廃止し、シャリア投資環境の整備を助長することだ。そのため、彼は政府がこの法令を直ちに発令するよう要請している。「その形は政令、大蔵大臣令、あるいは局長の指示、どれでも問題ない。重要なのは、二重課税が直ちに廃止されること」と彼は語った。

他部門を刺激
 バンク・ヌガラ・インドネシアのシャリアおよび商業部門の役員ビエン・スビアントロ氏は、このインドネシア銀行の要請を支持している。その理由は、二重課税を廃止する法の発令によってシャリア銀行業のより急速な発展に弾みがつき、その結果シャリア銀行業のビジネスとしての価値が容易に高まるためである。「この二重課税を廃する暫定法を私は心から支持する」と語った。

 この法令の施行によって、シャリア銀行業だけでなく、他のさまざまなシャリア金融部門の発展が促されるとビエン氏は言う。二重課税がなくなればシャリア国債(SBSN)(注3)は従来の手段に比べてずっと競争力がつく。「企業のシャリア債券、あるいはスクーク(注4)の発行についても同じことが言える。二重課税の廃止によって、企業は競ってスクークを発行することになるだろう」

 ビエン氏はまた、二重課税の廃止が中東の投資家に対し、インドネシアに投資する大きな機会を与えるのは確実だと語った。そうなるとインドネシアは、シャリア金融の面でマレーシアと競うことができる。この隣国は、かなり前から有利なシャリア投資環境を作るために二重課税を廃止している。

 ラムジ氏は以前、今年末にシャリア銀行業が2.5%のシェアーを達成するのは困難だと述べた。年末まであとわずかで3ヶ月しか残されていない一方で、今年8月のシャリア銀行業のシェアーが、全国の銀行業のわずか1.7%にしかならなかったからだ。一方、この8月のシャリア銀行業の資産増は非常に少なく、昨年8月と比較して29.2兆ルピアから30兆ルピアになっただけだった。「2.5%のシェアーという今年の目標は、税と他の諸問題のために実現は困難。今年末には多くても2.1か2.2%だろう」と語った。

 当初インドネシア銀行は、シャリア銀行業のシェアーが今年末に2.5%になり、2008年末には5%になると期待していた。しかし、今年末はさまざまな要因により、おそらくこの予測は達成されない。その要因の一つは、ムラバーハ契約(注5)によるシャリア銀行業の融資業務に対する二重課税を廃止する修正付加価値税法案が、可決されていないことだ。「以前は、この法律が今年末にはできると期待していた。しかし、今になってもまだ何ら進展がない」と述べた。



注1) シャリア銀行業: イスラーム法に基づく銀行業務
注2) 二重課税問題: イスラーム金融では金利の取得が禁じられているため、融資を行う場合次のような形を取ることが多い。
 (1) 相手から財を購入し、同時にその財を同じ相手に割賦販売する。
   そのとき売買の利ざやの形で金利相当分を取る。
 (2) 相手に投資し、投資の利益配分(配当)の形で金利相当分を取る。
(1)の場合は、財の購入時と販売時の2度にわたり印紙税や不動産取得税が課税されることになり、(2)の場合は、通常の金融取引では借入人は支払利息を費用として課税対象から控除できるが、配当の場合は控除対象とならないので、資金調達コストが高くなる。
このように、伝統的金融取引と比べて税制上不利が生じるため、それを解消するための法的な措置が必要であるというのが本記事の趣旨である。
注3) シャリア国債(SBSN): イスラーム法に基づき国が発行する債券。さまざまな種類がある。
注4) スクーク: 銀行が財を購入して、それを元の所有者にリースバックすることで金融をつけること
注5) ムラバーハ: 物品の売買を介在させる金融手法。例えば企業がある物品を購入する場合、いったんイスラーム銀行がそれを購入してもらい、イスラーム銀行はそれに利ざやをのせて企業に売却する。企業は購入代金を分割払いで銀行に支払う。事実上銀行が企業に運転資金を提供する仕組み。今日のイスラーム金融の中心的手法。




(翻訳者:山本肇)
(記事ID:ec0709261hy)

原題:'Segera Hapus Pajak Ganda'
http://www.republika.co.id/Koran_detail.asp?id=308399&kat_id=256



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