展示品
[作品23]
■カンダハール市の内部
Interior of the City of Candahar 
(英語原文をよむ)

 この光景は1841年の12月に、かつてコハンディル・ハーンが住んでいた屋敷の屋根から写したものである。コハンディル・ハーンは現在、これまで兄弟ラフムディル・ハーンとミールディル・ハーンと分け合ってきたこの州の知事として、最高の地位にある人物だ。彼らはみな我々がその領土に迫ったときペルシアに逃げ、我々が撤退すると戻ってきた。彼らは極めて強力なバーラクザイ族の一門であり、またカーブルのアミール[ドースト・ムハンマド]の兄弟でもあった。彼らはアミールに不信と妬みを抱いており、共通の敵に対して戦うということだけが彼らをアミールと一致協力させていた。

■カンダハールの歴史
 カンダハールの古いまちはアフガニスタン人にとってはアレクサンダー大王によって建設されたものと信じられてきた。しかしその時代以降に、さらに二つ新しい都市が、地震で破壊されたり、新都市建設のために遺棄された。現在の(第4番目の)都市は、95年前にアフマド・シャー によって計画され、場所が定められ、チヒル・ズィーナ(40の装飾)と呼ばれる山の下に建設されたのだが、その北西には、それら旧市の一つの巨大な廃墟が広がっている。ここではかなりよく修復された家屋や水路などをまだ見ることができる。このような昔の時代の遺物の中には、驚くべきことに、大理石の巨大な大杯や聖水盤などが残っている。それは廃墟となったあるマスジドで見つかり、それにまつわる言い伝えがあったのだが、どのようなものであったか忘れてしまった。このスケッチの左側にはアフマド・シャーの墓廟が、右側にはモスク、バーラー・ヒサール、城塞が見える。絵の前景にある家屋や建物は、度重なる地震のためにすべて多かれ少なかれ荒れ果てている。しかし、この絵から、当時の家の中の構造を知ることができる。屋根が見えるが、たいてい円蓋状に作られている。平らな屋根の場合と違って、円蓋状の屋根はこの国のこの地方では極めて乏しい木材を必要としないからである。

■町の地理
 へラートを除けば、カンダハールはドッラーニー朝の唯一の首都であり、非常に良く耕作・灌漑された肥沃な平地の中に位置している。周囲は豊かに生い茂った牧草地、広々とした果樹園や庭園に囲まれ、ところどころ山々に取り巻かれている。周囲の丘や建物はみなそれぞれある呼び名を持ち、その一つ一つに言い伝えがあった。またここには魔法の洞穴があり、そこでは乙女たちが石に変えられたり、絶望した恋人たちが奇蹟を起こしたりした。また何世紀もの間すぐれた聖者達が修行に励んだ、人里離れた洞穴があった。この都市の形は長方形で、城壁の周囲は4マイル[約6.4キロ]ほどである。6つの城門があり、そのうちの4つはヘラート、カーブル、トープハーナそして、バルドゥッラーニーの名が付いている。またバーザールになっている四つの主要な通りは市の中央で一つに合流しているが、そこは円蓋のある建造物で覆われていて、チャールスー (四路)と呼ばれている。その両側には屋根つきのバーザールが伸び、その上にはナッカーラ・ハーナ と呼ばれる王室楽団の部屋がある。カンダハールは市中を流れる一つ以上の流れによって水が豊富に供給されているが、それらの川には橋が架かっている。現在はほとんど残っていないが、かつて通りは木々で埋め尽くされていた。現在も市の他の区域には木々の緑に豊かに覆われている所もある。

■街区と住民
 カンダハールは壁で囲われた無数の街区に分かれており、それぞれの街区に所に個別の家族や氏族が分かれて住んでいる。これらの街区に集まってきた種族の中には、ペルシア人、ウズベク人、カーカル族、バローチー人、ハザーラ人、ユダヤ人、ギルジー部、アルメニア人、アラブ人、ドゥッラーニー部、そしてヒンドゥー教徒が見られる。中でもドゥッラーニー部が最大かつ最強の種族である。彼らはすべてのアフガン人の中で最も貴族的な外見を持ち、振る舞いも洗練され、進歩的で、挙動においても独立性が強い。しかし、この一族の一分枝であるポーパルザイ族は、他のドゥッラーニー部よりもすぐれている。なぜならば、この氏族から、アフガニスタンの神聖な王家であるサドーザイ家という一族が生まれたからである。爾来彼らはその臣民の上にさまざまな特権を有している。それは彼らが意識しているおのれの重要さに加え、そのさらに尊大な振る舞いを説明するものだ。現在のカーブルの支配者がその強大な一員であるバーラクザイ族も、ドゥッラーニー部の一氏族である。

■景観の特徴
 外から、あるいは一定の距離を置いてカンダハールを眺めると、その形には驚くような特徴は見られない。アフマド・シャーの墓廟の頂、何本かのミナレットの尖端、城壁の上部にある胸壁のほか、長く高い壁の上には何も見えないからだ。しかしその内部は、銃眼付きの胸壁から覗いて見れば分かるように、人を楽しませること間違いない。不ぞろいな泥の家は、一部壊れているが、木々やミナレットによって変化を与えられている。四角い赤煉瓦の住居には、トルコ風のアーチのあるドアと窓がついている。ヒンドゥーの極めて高い家屋がある。平らな屋根のあちこちにテントが張られている。人々で混み合い、様々な呼び声で賑わっている開け放たれた長いテラス、家畜の糞と漆喰で固められた泥でできたカーカル族の小屋、その周囲には大きな野生種のような水牛が繋がれている。高い壁で囲まれたそれぞれに異なる部族ごとの地区。部族長たちの軍事用の城。ある偉大なドゥッラーニー部の君侯の、派手に飾られ噴水や広場、中庭がある宮殿。他の住人たちの円蓋のある家、バーザール、モスク、小塔、小丸屋根が、並外れた近寄りがたい山々のただ中に立ち、全体で目を見張るような一つのパノラマを作り出しているのである。

 
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