展示品
[作品12]
■夏服を着たコーヒスターンの歩兵
Cohistaun Foot Soldiery in Summer Costume 
(英語原文をよむ)

 コーヒスターンはその住民の好戦的な性格で注目されており、有能かつ優秀なピヤーダ (歩兵)で名高いものたちが常時4万家族ほどいる。軽歩兵としては彼らに比肩する者はなく、その数と決然とした勇敢さにより、彼らが何らかの変事にかかわると、測り知れないほどの重要性を持つことになるのである。

■ミール・アラム
 このスケッチの主役たる人物はコーヒスターニーであり、名前をミール・アラムという。かつて彼は、ゴルバンド峠(バグラーン北方にあるトルキスタン への主要道路)に出没する悪名の高い盗賊団の一員であった。彼らはハサンという名の頭目に率いられていたが、彼はその縄張りの山道を通るすべての物品をゆすり取り、彼を捕縛しようとするすべての企てに抵抗して、国全体に対する恐怖となっていた。ある晴れた日、大胆にも何人かの手下とともにカーブルに侵入した彼は、大使と私的な会見を申し入れたが、それは当然拒否された。しかし、彼が執拗に要求を繰り返したため、国事に関する重要な打ち明け話をするという口実で、彼のアルズ (請願)は受け入れられた。

■大使との会見
 会見が許可されると、彼は第三者がいることに強く抗議し、部屋は人払いされた。彼はようやく誰も会見を邪魔しないことに満足した。そしてこの盗賊団の頭目はこっそりと用心深く、まるで壁板が彼の恐るべき秘密を握るのを恐れてでもいるかのように大使に近づくと、注意深い聞き手の耳の近くでひそひそと囁いた。「もし私に6000ルピー をくれるなら、私は、インシャー・アッラー(神が望み給うたならば)、ドースト・ムハンマド・ハーンの首を持参し、あなたの足下に置いてみせよう」。亡命したその支配者は、王位奪還を目指した最後の攻撃パルワーンダラの戦いを仕掛ける前で、ニジュラーウとゴルバンド峠の周辺をさまよっていた。情け深く、[その死が]非常に惜しまれるウィリアム・マクノートン士爵がこの大胆で卑劣な提案を聞いたときの恐怖と驚愕について、述べる必要はほとんどないであろう。またその提案が即座に、また憤然として拒否されたということも、付け加えるまでもない。

■衣服と武器
 ハサンと配下の盗賊たちはその後、アラマーニー (追いはぎ)によって得ていた不安定な生活の糧を放棄し、私の兄の護衛歩兵隊に入隊して最も優秀な兵士となった。彼らの衣服は次のようなものだった。青、赤、もしくは白のゆったりとしたシャツを、だぶだぶのズボンから出して着る。モスリンのカマルバンド(腰帯)、もしくはペシャーワルのルンギー すなわち絹と木綿の混紡の格子縞の飾り帯に、カマルキーサ 、すなわち刺繍の施されたロシアの皮製の弾薬、弾丸、薬包入れを下げ、そして、小型の槌、銃用ピック、ナイフ、数珠など種々の有用な品々を、とてつもない形のフックで吊るしていた。頭には高く緩やかに垂れたターバンか、ぴったりとしたふちなし帽をかぶっている。彼らの武器は、鉄製の短槍と水牛か犀の皮製の盾、チュラー すなわち長さ25インチ[約30.5センチ]から35インチのまっすぐな短刀、シェールバッチャ (ライオンの子)と呼ばれるラッパ銃、長さ46インチの銃身と、象牙や真鍮、銀製の模様のついた飾り鋲で装飾された銃床を持つ火縄銃トファング 、湾刀、そしてジャザーエル銃[後述]である。

■ジャザーエル銃
 最後に挙げたものは長大で重いライフル銃で、大きさは壁飾りに似ており、射撃の時は鉄製の二股の銃架に据えられる。しかしながら、かの優秀な歩兵たちはその口径の大きさにもかかわらずこの銃を肩に担ぎ、岩から岩へ飛び跳ねたり急斜面の断崖をよじ登ったりするときなど、まるでその銃が羽根でしかないように器用に扱う。この恐るべき武器の銃床が、真珠層のボタンで花模様に飾られているのを見たことがあるが、あれはおそらく、彼らのはずれることのない照準に不幸にも犠牲となった者たちの下着からもぎ取られたものであろう。また、私がカンダハールで手に取ったものは、その銃床の端から端まで、1列ないし2列の歯がはめ込まれていた。アフガン人たちは、装填の時 [弾薬量の]正しい比率があるということをまるで考えない。弾丸を半分開いた掌に乗せると、その上から弾丸が隠れるまで火薬をかけ、そしてそれら二つを一緒に押し込むのであるが、この際不注意により、先に[弾丸が]銃身の底に届いてしまうこともある。しかしながら、彼らは時折簡素な秤を用いることがある。片方に、一つづりになったガラスや鉛製の数珠球や砂利の詰まった鉄製の管を載せ、これによって、最小散弾ほどの大きさの粒になった火薬(同じような器具に入れられている)の量を測るのである。そして次に弾丸が装填されるわけであるが、これは常にぎざぎざの鋳型で鋳造されているため、裂き傷を引き起こすことがある。その代用品として、真鍮が不足しているときには磨いた小石が用いられる。私はそうした小石が、そのまわりにきつく巻きつけられた長い鉄の釘や真鍮製の針金で腕や足をえぐり、醜い傷跡を残すのを見たことがある。彼らのライフル銃とジャザーエルは死をもたらす武器であり、信じられないくらい離れたところから人を殺す。これら熟練した射手には、600ヤード[約549メートル]でも普通の射程距離と見なされる。我々が最後にジャグダラクのカーブル側30マイルのところにあるハフト・コータル(七つの険しい山道)を下りた時、たった1人のジャザーエルチー により不名誉な損害を被ったが、私はそれを目撃した1人であった。その射手は、我々の上方はるか遠くの高地に位置を占め、銃が発射される時の弾薬の閃光によって彼の姿が一瞬映し出される時以外は、まったく目に見えなかった。

■ジャザーエル銃による狙撃
 夕闇が近づいていたが、我々は過酷な1日の骨折りのあと、いまだ戦い続けていた。隘路があまりに狭かったため、皆は一団となって身動きが取れなかった。ビーンという音を立てる俊足の死の使いは、甲高い音を響かせながら我々の中を行き過ぎ、急所を突いたときのドスッという奇妙な音とともに、その標的に命中した。その光景を実際に目撃した者でなければ、誰にも想像できまい。発射の間にいくらかの遅れはあるものの、死を知らせる音は時を知らせる鈴の音と同じような規則正しさで聞こえた。そして、そのたった1人の射手の放つ閃光が見えるや、「次はお前、次は俺だ」という声が英語やヒンドゥスターニー語であちらからこちらへと交わされた。そして、我々の内の40人が殺害されるか負傷した。我々が山中の彼のねぐらのそばを行軍していく時、野蛮な叫びが漆黒の山道や荒涼と広がる土地に響き渡り、アフガン人が戦闘の際に叫ぶ「ヤー、アッラー! アッラー! アッラー!」という叫びが、すべての崖の間にこだました。

 
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