展示品
[作品1]
■完全武装のドゥッラーニーの族長たち
Douraunee Cheiftains In full Armour 
(英語原文をよむ)

 このドゥッラーニー部の戦士の衣装は、アフガンの貴人がどのように鎧を身につけていたかを、正しく伝えている。とはいえ、口絵に描かれているように、ピカピカと輝くよろいを完全にまとった彼らに会うことはあまりない。疑いもなく、多くの者はそれと悟られることなく、完全武装していたのであった。たとえば、ある者たちは、とにかく兜を被っているということが人目を引くため、鉄兜と鼻当て、羽飾りにショールを巻いていた。多くの者が、絹のカミースの下にまとった鎖帷子(かたびら)を私に見せてくれた。それは、特に鎧の隙間をねらった仲間のナイフ、あるいは闇討ちによる一突きから身を護るためのものだった。
胸当てや鎖ズボン、手甲(てっこう)は、チョガすなわち外套の下に付けられる。高名なアクバル・ハーンは常に完全武装で現れた。シャーのもとに集められ、功績によって栄誉を得た族長たちへの特別の敬意の印として贈られるシラサギの羽飾りが、彼の兜の鉄管に差し込まれている。私は孔雀の羽(王族の象徴)もしばしば見た。他の場で簡潔にドゥッラーニー部について記述したので、私は、一緒にいる人物たちが、カーブルの王家一族であるサドーザイ家が生まれたポーパルザイ族の者たちであることのみ付け加えよう。ポーパルザイ族と、特にシャー・シュジャーについては、アフガンの特徴的な礼儀作法として、いくつかの逸話を述べるつもりである。

■シャー・シュジャー
 この不幸な王は我々[イギリス]に対する反乱の際には、叛徒と結託したことを非難されたが、現在までのところ、その非難を裏付ける直接の証拠は提示されていない。それゆえ、彼の背信行為の疑惑すべてが単なる憶測にすぎないので、我々は、彼がそのような愚かな罪を犯したとか、彼の不安定な王位を支える唯一の支柱を破壊するほどに、みずからの利益を完全に忘れていたと信じることはない。我々に対して、彼が謝意を示してくれることは期待できまい。というのは、我々が、彼が玉座につくのを助けたとはいえ、この玉座を全くうらやむに足りない、窮屈な地位に我々はしてしまったからだ。そのため、もし彼が我々を裏切ることによって、その孤立した状況を少しでも改めることができたのならば、我々は彼の背信に驚かなかっただろう。彼は国王ではあったが、名前だけで、権力なき君主であり、真に「怠惰な王」であった。それに対して、イギリスの公使が「宮廷の主」であった。シャーのワズィール[宰相]は我々の意志の奴隷に他ならなかった。シャー自身の意志は宮廷全体で反対にあった。そして、同盟者のささやかな偽りが、なんとか君主の本当の態度を覆い隠した。しかし、忌々しく、耐え難いものであったに違いなかったが、威厳のない彼の王権を維持したのは我々の存在のみであった。したがって、彼は十分よく理解するべきであったが、我々が彼を見捨てた直後に起きた彼の暗殺によって証明されたように、ファランギー たちの勢力の衰えは、彼自身の破滅の確かな前兆であっただろう。この不幸な男に関する我々の逸話は、その一部は彼自身の肉声での証言に基づいているが、彼が果たすよう求められた役目がいかに困難であったかを示すだろう。

■イギリス将校の謁見
彼に仕えていたイギリス将校たちは、謁見式(えっけん)の際に、常に宮廷の外で待たされ続けていた。この扱いと、それに伴う不平不満について、アレクサンダー・バーンズ士爵は王に話をする機会を得たと私に知らせた。彼は付け加えたという。「イギリスは陛下が挨拶に対し返礼を全くしないことにも心を痛めております」。シャーは悲しそうに見えたが、答えた。「第一の不満については、余は聞くべき点がある。それは余のイーシクチーバーシー (儀典長)の誤りであった。我が臣民はイギリスを妬み、ドアの前で待たせ続けることによって余に対する勤めに嫌気を起こさせようとしている。しかし、後者に関しては是正すべきことは何もない。すでに、ロード・サーヒブ [閣下](このように彼らは我々の公使を呼んだ)は面前に座っているが、この国の貴族は決してそのようなことはしない」。シャーはここで、ウイリアム・マクノートン士爵に不本意ながら許した謁見室で待つようにほのめかしたのである。度重なる注文の後、可能な限り最も低い腰掛けが作られた。強要とは全く逆のやり方で、しゃがみ込んだ姿勢の公使閣下に接見するためであった。

■シャーの説明
シャーは続けた。「それに、余はどのようにして、目礼によって答礼するという数世紀に亘り続いた伝統的習慣を改めることができるだろうか。余自身の貴族たちは十分な答礼であると見做しているのみならず、余の表情の輝きを見つめることを最も高貴な栄誉と考えているのではないか。あなたも忘れたのだろうが、余は世界で最も誇り高き、父である 。

 
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