| 日本で作ろう!マダガスカル料理 第2回 ダラカカ(drakaka)の巻
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| 初出:『マダガスカル研究懇談会ニュースレター Serasera』第6号 pp.12-14 2002年 | 
| 1.用意するもの(3人から4人分) ワタリガニ 3匹から4匹
完熟トマト 3個くらい
ホールトマト缶詰 1缶
玉葱    1個
ニンニク  半分
サラダ油 少々
塩 小さじ一杯
水
肉厚の鍋
(お好みに応じて)浅葱 1束
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| 2.料理方法 ワタリガニの甲羅をはずし、中の鰓を取って水洗いします。それから、全体を四つに切り分けます。カニの鋏が大きい場合は、あらかじめ包丁の背で叩き割れ目を入れておきます。また、カニが雌で卵を抱いていたり卵巣がある場合は、それも一緒に鍋に入れ調理します。
完熟トマトを四つくらいに切り、種子抜きをします。皮は、取りません。玉葱は、ざっとみじん切りにします。ニンニクも皮を剥き、こちらもみじん切りにします。
鍋を火にかけ、サラダ油を薄く底一面にひきます。油が熱せられたところで、種子抜きしたトマト、みじん切りにした玉葱とニンニクを鍋に
入れ、よく炒めます。全体が柔らかくなりペースト状になったところで、缶詰のホールトマトをその汁ごと加えます。それらが煮立ち、ソース状になったところ
で用意したカニ、その卵や卵巣、それに塩と水を加えて蓋をします。水は、カニ全体の量の三分の二くらいが適当です。前回のヘナ・リチャと同じく、カニが隠
れるほど多くの水を入れてはいけません。煮込み時間は、これも鍋の形状や厚さ、カニの大き、加えた水の量などによって違ってきますが、およそ40分から1
時間くらいです。
食卓に出す前に、細かく切った浅葱を上に散らすのも、味と見た目のアクセントになりますので、良いでしょう。
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| 3.ここがポイント! 今は、冷凍や冷凍ものを解凍したワタリ
ガニが売られていますが、やはり生にかぎります。さらに最近では、既に甲羅がはずされ鰓を取って切り分けられた鍋用のものも店頭に見られるようですが、な
るべく丸ごと一匹を購入してください。また、雌ガニは卵や卵巣を持っていて、調理後のソースの味がよくなりますので、なるべ
く雌を選んでください。魚屋さんに訊くと、雄と雌を教えてくれるものと思いますが、あまりカニに詳しい店員さんの居ない店で購入する時は、自分で次ぎの箇
所に注意して見分けてください。すなわち、カニの腹にある三角状の皮の先の尖っているのが雄、丸みを帯びているのが雌です。またこの調理方法は、ワタリガ
ニないし関東でガザミと呼ばれているカニに適しています。タラバガニや毛ガニやずわい蟹には、その肉の性質と味の点で適していません。
夏期などの甘い完熟トマトの入手できる時期でしたら、上記の缶詰のホールトマトを加えなくてもかまいません。逆に、甘い完熟トマトを入手できない時は、缶詰のトマトを加えたほうが、出来上がりのソースの味が良くなります。
煮込み時間は、前回のヘナ・リチャ同様、時計よりも嗅覚で判断してください。カニの生臭い匂いや玉葱そのものの匂いが消え、甘い香ばしい匂いになった時が、火を止める頃合いです。
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| ダラカカ(drakaka)とは、マジュンガからディエゴスワレス地方の言葉
で、<カニ>を意味します。これらの地方の河口にはマングローブの発達した所が多く、マングローブ林の泥の中にカニが沢山生息しています。このマングロー
ブガニ、市場で売られている時は生息地の赤や黒の泥まみれですが、泥を落とし、茹でたり調理したりすると真っ赤になります。塩水で茹で、そのまま食べても
たいへんに美味しいものです。マングローブガニは、泥をつけたまま陽に当たらないようにしておくとそれだけで数日間は生きていますので、アンタナナリヴの
市場でもマジュンガから陸送されたカニがスビキャの籠の中に折り重なって入れられ売られているのを、見ることができます。拳大の小さなものから甲羅の差し
渡しが20cmを超える大型のものまで様々な大きさがありますが、中型のものがこの料理方法には最適のサイズのようです。実際にマダガスカルでマングロー
ブガニを買って自分で調理する際には、甲羅の端のギザギザで手を切らないように、また鋏にはさまれないように注意してください。大きなカニの鋏は、鉛筆程
度は楽に折ってしまうくらいの力があります。 生エビが日本やフランス向けの海外輸出商品となり庶民にはおいそれと買うことのできない高嶺の花なってしまったのに対し、マングローブガニは毎年値上が
りしているとは言え、それでもマジュンガやディエゴスワレスの町の庶民の食卓では馴染みの深いものです。ただ、市場近辺の現地食堂ホテーリを除き、レスト
ラン等でお目にかかることはめったにありませんので、このトマトソースで煮込んだカニ料理を食べたことのある日本人は、少ないかもしれません。しかし、一
度マジュンガでこの料理方法によるワタリガニを食べた日本人は、その味の虜になるようです。この機会に、マジュンガやディエゴスワレスの庶民の家庭の味に
挑戦し、楽しんでください!
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