AFLANG@東京の式次第なり |
日取り: | 2001年4月7日(土) |
時間: | 午後1時〜 |
会場: | 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 |
セミナー室とりそこね、小会議室 | |
参加者: | 阿部優子、神谷俊郎、熊切拓、古閑恭子、榮谷温子、塩田勝彦、 |
長渡陽一、中野暁雄、松下周二、R・R・ラトクリフ、若狭基道(アイウエオ順) | |
ところにより小林直明。(中村さんはマラリアご発病により開始前に早引け お大事に。) |
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長渡陽一 | 「アラビア語方言分類への2つのアプローチ」 アラブ地域 |
1)語彙統計法によるアラビア語諸方言の年代決定 Lees の提唱した語彙統計法を、Rabinの語彙リストに基づいて、現代アラビア語方言に適用、マルタ、モロッコ、キプロス、チャド、エジプト、シリア、イラクの各方言の分岐年代を明らかにする試み。今後の課題として、単語の同定の基準をより明確・精密にすること、分岐だけでなく、分岐後の借用関係などの可能性も視野に入れること、が挙げられた。 2)動詞形態によるアラビア語方言分類 1-「食べる('akala)」の3人称男性単数完了形、 2-「歩く(ma∫aa)」の3人称男性単数完了形、 3- 未完了形1人称の単数形と複数形の接頭辞・接尾辞、 4- 2人称・3人称複数形に性の区別があるか、の4点に着目、方言を分類し系統樹を描いた。 最後に1)2)を合わせて、各方言の系統と分岐年代を同定してみた。 | |
神谷俊郎 | 「バツァ方言に現れる声門狭窄素性をめぐって −クリック音と入破音−」 南アフリカ |
バツァ方言(スワティ語の方言とされるがズールー語・コーサ語の影響を受ける。何れもングニ諸語)のクリック基音と両唇入破音は、鼻音が先行する環境においてbreathy voice化する。そしてbreathy voice化は、ングニ諸語全体で見られる現象であろうと推測される。バツァ方言のクリック基音と両唇入破音の共通素性として声門狭窄素性があげられ、この声門狭窄素性をbreathy voice化の要因と考えると、ングニ諸語におけるクリック基音には、本来的に声門狭窄素性を(現在では消失してしまったにせよ)担っていると考えられる。 | |
松下周二 | ”Diaspora and Linguistic Atavism --Hausa Language in the Sudan--” スーダン |
今を遡ること100年前、青ナイルと白ナイルの分岐点(ゲジーラ)に逃げ込んだハウサの皆様。タカーリとか呼ばれてましたが、この皆様のハウサ語、少し変わってるのです。例えば数詞。ハウサランドの20, 30, ...90はアラビア語起源なのに、タカーリの皆様はハウサ語オリジナルの形態素を使って10X2, 10X3, ... 10X9と申します。先祖がえり?それとも新しい形?これが松下センセの困っている疑問なのです。とあるインフォーマントによりますれば「ハウサ人の物売りたちが数字をアラビア語で喋ったら、周りのアラブ人に本当の値段を知られてしまうではないか」・・・眉唾ですな。(ウェブ版ペーパーはこちら) | |
熊切 拓 | 「アラビア語チュニス方言における -∫i の解釈」 チュニジア |
アラビア語チュニス方言に見られる接辞 -∫i は疑問文を作るほか、ma-と共起して否定文を作る。本発表は、この疑問接辞の -∫i と否定接辞の -∫i の双方を統合的にとらえる試みである。まず「-∫i が文の中で統語的ブループの切れ目を作る働きがある」という仮説を立ててデータを分析し「-∫iが割り込むことで前半部と後半部の関係の不確かさを生じさせる」という解釈にいたる。さらに-∫iに何も後続しない例を視野に入れると「-∫iの直前に来た要素は必然的ではなく、とりあえずの選択であることを表わす」という解釈もできる。発表者の修士論文の「-∫iはma-の作用域を確定する機能を持つ」という結論を踏まえると前者の解釈により可能性があると思われる。 | |
若狭基道 | ”Person names in Wolaitta” エチオピア |
1)普通名詞とは異なる活用を示す人名名詞を先行研究を批判しつつ形態論的に一瞥 2)人名名詞によって表されるものの意味論的考察 3)父親の名と共に使われるときの活用、及びアムハラ語が与えたとんでもない影響の紹介 4)伝統的な命名法と現在流行中の命名法を言語接触の観点から概観 5)その他 おまけ。 とほぼ予定通りのご発表であった。 |
染井墓地に散り残るソメイヨシノを小会議室の窓から夕闇をすかしてぢっと見ながら、酒は飲め飲め、もっと飲め♪ 7時頃から、オーランド氏によるアフリカ音楽の生演奏(ドラム)。 |