AA_年報2023
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4 人間は一人では生きられない群居性動物であり,その生を支える「社会性」がいかなるものであるのかは,我々にとって根源的な問いです。現代では,それまで出会う機会のなかったような人やモノが地域や民族,国民国家の枠組みを越えて出会い,互いに影響を与え合うトランスカルチャー状況が生じています。そうしたなか,差別や排除が深刻化したり,差異を包摂する新たな社会性が希求されたりしているのが現状です。さらに,ポストコロナ状況においては,我々の生きる世界が,人間だけでなく,ウイルス,動植物,そしてモノとのダイナミズムから多元的に成り立っているという視点から社会性を考えることがますます重要となるでしょう。本研究では,アジア・アフリカのフィールドにおける人々の実践に着目しながら,寛容と不寛容が生じる機序を探究することを目的とします。そして,トランスカルチャー状況においてポストコロナを「ともに生きる」ための議論のプラットフォームの創出をめざします。 牧畜民チャムス:木陰に佇む少女たち /ケニア,バリンゴ /1990年(撮影:河合香吏)  ネラ・フォキル/バングラデシュ,クミッラ県ダウットカンディ /1999年4月(撮影:外川昌彦)  マレーシアのコスプレイベントにて/マレーシア/2019年10月(撮影:床呂郁哉)  バテッの子どもたち:バショウの葉を日傘に伐採道を行く/マレーシア,クランタン州クアラ・コ /2011年7月16日 (撮影:河合文)Core Projects研究代表者:西井凉子関連所員:河合香吏,外川昌彦,床呂郁哉,吉田ゆか子,河合文,村津蘭http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/projects/anthropology-core社会性の人類学的探究:トランスカルチャー状況と寛容/不寛容の機序人間の生を支える「社会性」とはいかなるものであるのか。本基幹研究は,アジア・アフリカの寛容と不寛容の機序を,個別性を越えた普遍的・実践的視野から探究します。基幹研究

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