AA研年報 2021-2022
6/24

4人類学系Anthropology世界が不確実性や偶然性の只中にあることを,今ほど感じることはありません。本基幹研究は,アジア・アフリカの在来知の可能性を,個別性を越えた普遍的・実践的視野から探究します。基幹研究Core Projects ケニアの牧畜民・チャムスの牧童。休息し反芻する牛たちに囲まれて。(撮影:河合香吏)  ウガンダの牧畜民・ドドスの少女。小さな妹を抱く。額には「命を護る」白い泥が塗られている。(撮影:河合香吏)  バリの葬式(撮影:吉田ゆか子)  マレーシアの狩猟採集民バテッの親子。ドリアン採集からキャンプへと戻る。(撮影:河合文) 文化人類学はある時期まで,小規模社会でのフィールドワークを活動の中心としてきました。しかし近年,国内外において,「上位」の政治社会にあたる国民国家や「近代世界システム」をはじめ,イスラーム世界,中華世界,インド洋海域世界,南アジア世界といったトランスナショナルな社会・文化圏,さらにはグローバルな地球環境を視野に入れたマクロ・パースペクティヴな研究への必要性や関心が高まってきました。 他方,その対極にむかう方向性として,個々人の身体性を分析・考察の起点とした,間身体的実践,ハビトゥス,熟練と暗黙知,アフォーダンス,社会空間など,ミクロ・パースペクティヴな問題系も同時に浮上しつつあります。 このような国内外の研究動向をふまえて,人類学的思考として現在求められているのは,地域別の研究や個別の主題に基づく調査研究をこえた,アジア・アフリカの「在来知」の新たな概念化や理論化の試みであり,それを国内外に向けて発信し,グローバルな状況下の現代的諸問題の解決に寄与することです。 基幹研究人類学班は,「アジア・アフリカにおけるハザードに対処する『在来知』の可能性の探求」のテーマのもとで,これらの課題に先導的な役割を担う共同研究を推進します。http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/projects/anthropology-core「アジア・アフリカにおけるハザードに対処する『在来知』の可能性の探求-人類学におけるミクロ-マクロ系の連関2」代表者:西井凉子関連所員:河合香吏,栗原浩英,外川昌彦,床呂郁哉,吉田ゆか子,河合文

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る