15 本辞典はチベット・アムド地方におけるヤクや羊を中心とした牧畜生活のなかで日常的に用いられてきた民俗語彙を網羅的に収集・記録した約4900項目からなる辞典のWeb版です。6年あまりにわたり,学際的な現地調査と共同研究をおこなってきた成果をまとめ,チベット語からも日本語からも,また分類項目からも検索できる辞典として,2020年3月に公開しました。本辞典にはWeb版の他に書籍版とiOSアプリ版があります。Web版には辞典とリンクした牧畜文化コラムも用意しています。 『日本語マラヤーラム語辞典』(2019年)は,インド・ケーララ州の公用語であるマラヤーラム語(使用人口3500万人)と日本語の対訳辞書です。日本語とマラヤーラム語との間にはこれまで本格的な辞書は存在しませんでしたが,三省堂出版の協力により提供された,5万3千語以上の現代的な日本語の見出し語および例文とマラヤーラム語の対訳とからなっています。アジア書字コーパス拠点(GICAS)の研究プロジェクトで培われた文字処理法と辞書作りのノウハウを注ぎ,IRCプロジェクトによって構築したオンライン版電子辞書は,日本語あるいはマラヤーラム語の母語話者のどちらも利用できるように設計され,日本語,マラヤーラム語に加え,英語からの検索が可能です。 同辞書をもとにして,紙媒体の辞書(1500頁)が2019年3月にケーララ州言語研究所から刊行されました。インド中央政府の補助金を受け,価格もわずか1000ルピー(約1700円)に抑えられており,マラヤーラム語母語話者の日本語学習に便利なように,日本語の漢字にはマラヤーラム文字による読み仮名をつけるなどの工夫が施されており,英文による簡易日本語文法も備えています。同辞書は2019年に,インド・ドラヴィダ言語学会から,優れたドラヴィダ語研究の成果に贈られるヘルマン・グンデルト博士基金賞を受賞しました。インドでの授賞式については下記リンク先の記事をご覧ください。http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/event/news/awardメンバー:高島淳,峰岸真琴メンバー:岩田啓介,海老原志穂,南太加,平田昌弘,別所裕介,星泉,山口哲由充実した文化項目分類チベットの牧畜文化の全体像をつかめるように,乳加工,家畜表現,地形認識,衣食住,冠婚葬祭,宗教といった28の大項目を立てています。馴染みのない牧畜文化の概念に親しめるよう,中小の項目立てには特に工夫を凝らしました。音声も聞けるほか,写真・図版を豊富に収録しています。https://nomadic.aa-ken.jp/https://irc.aa.tufs.ac.jp/IRCでは2020年度に20件のデジタルリソース・プロジェクトを進めました。そのうち,8件は新規のプロジェクトです。(*は新規プロジェクト) 「チベット牧畜文化辞典」「日本語マラヤーラム語辞典」dictionaries2020年度IRCプロジェクト・ ツバル語ココヤシ文化語彙集 *・ Old Tibetan Documents Online・ カイロ圏都市研究のデジタルプラットフォーム構築 *・ 仮想現実の利用が可能な視覚資料の保存・公開とその利活用のための基礎的研究・ カイロのイスラーム建築データベースの構築 *・ Matsya projectヴィシュヌ教関連写本マイクロフィルムのデジタル化・ アイヌ語音声資料の文字化テキスト対応づけと公開(第7期)・ モンゴル諸語テキストのオンライン公開 *・ 牟田口義郎の撮影した1950~60年代の西アジア・北アフリカ・地中海沿岸諸国カラー写真画像データベース化 *・ 声調の音韻と音声に対する統語構成の効果―音声データのデジタルアーカイブ化 *・ 南部バントゥ諸語の形態統語論的Microvariationに関するテキスト及び音声データのデジタルアーカイブ化 *・ チベット・ビルマ諸語の音声データのデジタルアーカイブ化・ カチン・ポータルサイトの構築・ ユーラシア言語文化研究著作物の電子化 *・ シベ語出版物データベースの作成(第2期)・ チュルク諸語対照基礎語彙(第7期)・ マレー語・インドネシア語オンラインコーパス検索システムMalindo Concの拡充・ アラビア文字紀年銘(クロノグラム)年代計算プログラム・ オスマン演劇ポスター画像公開プロジェクト・ オスマン演劇ポスター・音楽データベースプロジェクト
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