2つなぐ・つなげる他者から学ぶことの豊穣本研究所は、アジア・アフリカという豊かな自然・人文環境を有する多様性にとんだ地域を言語学、人類学、歴史学的な側面から研究する研究所です。また、アジア・アフリカの諸地域の地域研究を行うことで、広く人類の言語・文化・歴史における普遍性や多様性を解明することを目指しています。グローバリゼーションが進行しつつある今日、地球上の諸社会の言語や文化は、急速な西洋化、あるいは均質化の方向に突き進んでいるといわれています。しかし、他方、アジア・アフリカ地域の諸社会は、長い固有の伝統や広い地域にまたがる交流の歴史を基盤として、それぞれに、個性豊かな文化を生み育ててきています。それら諸地域は、昨今のグローバリゼーションを受け入れる懐の深さと、それを包み込みつつさらに個性を輝かせる強靭さを持っています。そして、こうしたアジア・アフリカ諸地域の文化は、私たちが日常当たり前と思っていることが決して当たり前のものではないこと、暮らし方やものの考え方、風習やしきたりには、多様な選択肢があることを気づかせてくれます。こうした気づきをもたらしてくれることこそが、この領域の研究を行う研究者の最大の喜びの源であり、私たち人類にもたらされる最大の恵みといえましょう。とはいえ、アジア・アフリカの諸地域の中には、近年目覚ましい発展を遂げ、政治的・経済的に発言力を増大させている国や地域が増えている一方で、他方で紛争に見舞われたり、貧困から脱却できずにいる地域もあります。グローバリゼーションの進行しつつある今日であればこそ、このアジア・アフリカの動向は、日本のみならず地球社会の今に瞬時に大きな影響力を及ぼすことになると同時に、人類の未来を大きく左右することになりましょう。本研究所は、21世紀の穏やかで豊かな地球の見取り図を描いていくために、このような重要性をもつアジア・アフリカに関するより新しい認識の枠組みを提供する研究成果を生み出していくことを目指しています。本研究所は、全国共同利用研究所として1964(昭和39)年に設置されましたが、2010年度からはそれまでの成果を継承・発展させるべく、「共同利用・共同研究拠点」制度の下で、より一層国内外に開かれた「アジア・アフリカの言語文化に関する国際的研究拠点」として新たなスタートを切りました。広大かつ多様で、奥の深いアジア・アフリカを研究するためには、本研究所のスタッフだけでカバーしきれるものではありません。共同利用・共同研究拠点としての本研究所は、研究所の枠、さらには本研究所が附置されている国立大学法人東京外国語大学の枠を越えて、国内外の広範な研究者の参加を得て、共同研究を展開しています。それと同時に、研究所内部でも、重視する研究領域を明確にするために、2010年度から四つの基幹研究―「言語ダイナミクス科学研究」、「人類学におけるミクロ‐マクロ系の連関」、「中東・イスラーム圏における人間移動と多元的社会編成」、「アフリカ文化研究に基づく多元的世界像の探究」―を展開しています。今後は、これら2種類の研究活動を基軸として、より深化した研究の成果を生み出していくことが必要です。今後とも、本研究所は国内外の研究者コミュニティとの連携強化・拡大を進め、「アジア・アフリカの言語文化に関する国際的研究拠点」の名にふさわしい活動をする所存です。皆様のより一層のご指導・ご支援をお願い申し上げます。アジア・アフリカ言語文化研究所長所 長 あ い さ つ三尾 裕子
元のページ ../index.html#4