AA研要覧 2013
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共同研究研究資源17概 要研究者養成共同利用・共同研究課題【移民/難民のシティズンシップ—国家からの包摂と排除をめぐる制度と実践—】2011〜2013年度 代表者:錦田 愛子 所員3/共同研究員11国民国家を構成単位とする近代以降の世界において、移民、難民の存在は、滞在国における国籍の付与、一定限度における市民権の容認、人道的見地からの人権保障などの対象として、これまで主に論じられてきた。しかし超国家レベルの政体や交渉枠組みの拡大、また越境移動の活発化は、こうした人の動きを各国単位で対処されるべき個別の派生要素と捉えるだけでは不十分であることを示している。本課題では、国民という資格と、それに付随するものと考えられてきたシティズンシップを、切り離して考えることにより、現在実際に展開している複合的な市民、居住のあり方を解き明かしていく。国籍なきシティズンシップは可能か、実際の取得事例や当該国での位置づけ、シティズンシップとナショナル・アイデンティティとの関係、移民/難民の包摂と排除をめぐりシティズンシップが及ぼす影響などについて、制度と実践、理論と政策等のさまざまな側面から明らかにしていく。【近世イスラーム国家と多元的社会】2011〜2013年度 代表者:近藤 信彰 所員3/共同研究員2016〜18世紀にイスラーム圏を支配したオスマン朝、サファヴィー朝、ムガル朝という大帝国の統治体制と統治技術を前の時代および同時代の諸王朝のそれと比較しつつ、文書史料等の原史料に基づいて比較検討し、その特質を明らかにするのが、本研究課題の目的である。これらの帝国の、「柔らかい専制」などともよばれる統治体制は、多元的社会を巧みに扱い、一定の平和と繁栄をもたらした。現在、文書史料等さまざまな新史料により、これらの国家の統治体制・統治技術に関する研究は飛躍的に進みつつある。しかしながら、個人では新史料や個別研究を把握するのも困難になりつつある。最新の成果に基づきながら、共同で比較研究を行うことで、これらの国家がいかに多元的社会を統治したかを究明し、また、近代以降政治的安定をこれらの地域が失った理由を描き出す。http://meis2.aacore.jp/jr_islamic_states/【東アジア・東南アジア大陸における文化圏の形成と他文化圏との接触—タイ文化圏を中心として—】2011〜2013年度 代表者:クリスチャン・ダニエルス 所員2/共同研究員20これまでタイ文化圏の研究では、周辺のミャンマー・シャム・ベトナムの国家(前近代・近代国家を含む)からの影響が強調されてきた。中国については、雲南省・広西省との関係のみが考慮されてきた。民族・文化・言語の研究においては、東南アジア大陸部という地域枠組のなかで検証されてきた傾向がある。タイ文化圏は北において中華世界、チベット・モンゴル世界とつながっているが、また南においてベンガル湾の海洋世界と連続している。本研究課題では、この南北軸を中心とする広域的視点から、タイ文化圏の歴史・文化・言語を分析する。南と北に位置する民族と政権との交流・接触の中で、タイ文化圏の歴史・文化・言語がどのように形成され変容していったかを明らかにすることが主たる目的である。隣接するチベット・モンゴル及び中華の諸世界で起こった変化がタイ文化圏に対してどのような影響を与えたかを考察する。タイ文化圏を事例としながら、東アジア・東南アジア大陸における、文化圏形成のプロセスを検証する。【アフリカ史叙述の方法にかんする研究】2011〜2013年度 代表者:永原 陽子(京都大学) 所員3/共同研究員9本課題では、世界史的な視野にたった新しいアフリカ史叙述の可能性を追究する。従来のアフリカ史叙述の問題点として、無文字社会論の誤解により史料研究が疎かにされてきたこと、サハラ以南と以北(あるいはイスラーム圏)とを切り離す地域区分により大陸全体の歴史的特性をとらえる視点が弱かったこと、植民地化以前の中東/西アジア・インド洋世界、大西洋世界、ヨーロッパ等との歴史的関係が十分にとらえられずにきたこと、植民地時代を基準とした時代区分が行われてきたこと、それらのいずれの問題系においてもジェンダーの視点が軽視されてきたこと、などを挙げることができる。本課題では、これら諸点について検討を加え、文字史料・非文字史料双方を踏まえてアフリカ史像を構築し、アフリカ史と世界史とを有機的に結びつけて理解するために必要な視点と方法を提示することを目指す。

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