14共同利用・共同研究課題共同研究【アフリカ諸語のイベントの統合のパターンに関する研究】2012〜2014年度 代表者:河内 一博(防衛大学校) 所員1/共同研究員18このプロジェクトは、アフリカのすべての大語族を網羅し、手話も研究対象に含め、各言語が、空間移動、状態変化、アスペクトなどの意味領域において、イベントの諸要素を統合して形態統語的に表すのにどのような特徴が見られるかという問題を扱う。ほとんどのアフリカの言語は複数の動詞からなる構文を持つが、これらの構文の形態統語的な比較も意味的な比較も体系的になされていない。世界の他の地域の言語とも比較をすることによって、アフリカの各言語・語族が全体的にどのような類型的なタイプに分類されるかを分析し、そしてアフリカの言語に特徴的な現象はあるかどうかを考える。さらに、違う意味領域間の表現パターンの一貫性が各言語・語族内で見られるかどうかを調べる。【準動詞に関する通言語学的研究】2013~2014年度 代表者:山越 康裕(札幌学院大学) 所員2/共同研究員17本研究では、いわゆる非定形動詞、つまり準動詞にかんする以下の問題点について、東アジアの「アルタイ型」の諸言語を中心に、周辺の類型的に異なる形態統語的特徴を有する言語の事例も含めて考察する。(1) 主節述語と非主節述語が形式上区別されない、もしくはそもそも「節」の認定が難しい言語において、動詞の屈折をどう扱うか。(2) 準動詞の多機能性をどのように記述するか。(3) 動詞性の程度による準動詞と派生形式の区別は可能か。(4) 品詞分類、とくに形容詞の性質とに相関関係はあるか。これらの問題点について、フィールドワークによる一次資料に基づき諸言語のデータを分析・考察し、準動詞の多様性と通言語的特徴について一定の結論を提示することをめざす。 【ジャワ語テキストにみるジャワの宗教変容】2013~2015年度 代表者:菅原 由美(大阪大学) 所員3/共同研究員8これまでジャワの宗教に関する議論は「前イスラーム」的要素を強調したジャワのイスラーム受容の様相に説明の力点が置かれてきた。しかし、ジャワのテキストの歴史は9世紀にまで遡り、「前イスラーム」と一括りに説明するにはあまりに長い歴史的変遷を経ている。本研究は、ジャワ語(古ジャワ語及び現代ジャワ語)文書を通時的に比較・対照することにより、9~19世紀のジャワにおいて、外来宗教がどのように解釈され、変容してきたかを明らかにすることを目的とする。この目的を達成するために、19世紀以降出版されてきたジャワ語のローマ字翻字テキストをデジタル化し、コンコーダンスを作成し、これを利用して、テキストに表れる宗教概念やその変遷に関する分析をおこなうとともに、ジャワの言語・文化の変容過程全般に関する研究の基盤を構築する。これと平行して、研究基盤を活用する国際的な研究ネットワークの形成を図るとともに、海外ですでに構築されているマレー語文献研究基盤との連携により、マレー社会における宗教の変容過程との比較を試みる。 【複雑系としての言語:運用に基づく文法理論の可能性】2013~2015年度 代表者:中山 俊秀 所員4/共同研究員16従来の言語研究においては、文法は実際の言語使用から独立した自己完結した体系をなすという前提のもと文法の分析・理論化がなされてきた。しかし、近年の研究の中で、言語使用が文法知識に影響を与えることがさまざまな角度から論証されるようになり、言語システムと言語使用を切り離すことの正当性が強く問われている。本共同利用・共同研究課題では、局所的「例外」パターン、個人間・文脈間でのパターンのユレ、文法構造から説明できないパターン、歴史的変化に見られるパターンなど従来の文法研究で扱いにくい、実際の言語使用や変化に見られる規則性・パターンをも言語の動的な本質の一部として統合的に捉えることが出来る新たな言語記述・研究枠組みの構築を目指す。
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