AA研要覧 2013
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共同研究研究資源13概 要研究者養成共同利用・共同研究課題集い、究める【人類学におけるミクローマクロ系の連関】代表者:西井 凉子人類学はある時期まで、小規模社会のフィールドワークを活動の中心としてきた。しかし近年、上位の政治社会にあたる国民国家や「近代世界システム」をはじめ、トランスナショナルな規模にまたがる社会・文化圏、さらにはグローバルな地球環境まで視野に入れたマクロ・パースペクティヴへの関心が高まってきた。 また他方では、その対極にむかう方向性として、個々人の身体性を考察の起点とした間身体的実践、ハビトゥス、熟練と暗黙知、アフォーダンス、社会空間、個体形成など、ミクロ・パースペクティヴを軸とした問題系も同時に浮上しつつある。 こうした国内外の研究動向をまえに、人類学的思考として現在求められているのは、地域別の研究や個別の主題に基づく調査研究をこえた次元での、新たな概念化と理論化の試みである。本基幹研究は、その点で先導的な役割をになうことを目標とする。具体的には、個人と社会、構造とエージェンシーといった二項対立の構図をこえた地点から、身体や実践の主題をめぐるミクロ領域での研究と、広域におよぶ空間移動や生物進化のダイナミクスまで射程に入れたマクロな時間軸に基づく研究との、接合ないし理論構築にかかわる研究成果の呈示を企図するものである。http://www.aa.tufs.ac.jp/kikanjinrui/共同利用・共同研究拠点である本研究所にとって、所員が所外の研究者と共同で推進する共同利用・共同研究課題は、もっとも大切な研究事業のひとつです。参加する所外の研究者は、AA研の「共同研究員」として委嘱されます。各研究課題(プロジェクト)は公募を経て、所外の研究者を含む「共同研究専門委員会」によって採択されます。また年度ごとに研究成果や公開の状況などに関して評価を受けます。これまで多くの研究課題(プロジェクト)が組織され、約650点におよぶ出版物や、オンライン辞書・データベースなど、多様な研究成果をあげています。http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/projects/jrp/2013(平成25)年度に進行中の研究課題以下のリストでは、大きく分野ごとに分けていますが、多くの研究課題が複数の分野にまたがるテーマを扱っています。■言語学系【アフリカ諸語の情報構造と言語形式の類型論的研究】2011~2013年度 代表者:稗田 乃 所員1/共同研究員12アフリカ諸語の情報構造と言語形式の関係を探るための研究組織を形成する。アフリカ諸語の情報構造と言語形式の関係を研究する国際ネットワークの構築をめざす。同時にフンボルト大学において、プロジェクトと同様の「アフリカ諸語における情報構造と言語形式の関係について」の研究プロジェクトを、本プロジェクトと連携して申請した。近年、注目されている情報構造と言語形式のあいだに存在する関係について、アフリカ諸語の資料から研究する。共同利用・共同研究課題における研究テーマは、以下のものである。アフリカで話されている言語においても、情報構造は、プラハ学派以来の普遍的なものであるか。アフリカ諸語が情報構造を表現するのに、どのような音韻論的、形態論的、統語論的、言語形式を用いているのか。情報構造と言語形式のあいだに存在する関係を類型論的に分析すると、なんらかの類型論的特徴が見つかるか。観察される類型論的特徴に地理的関係が存在するか。以上のような研究テーマにしたがって、研究組織を形成し、国際研究ネットワークの構築を模索する。共同利用・共同研究課題

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