AA研要覧 2011
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共同研究17概 要研究共同利用・共同研究課題(共同研究プロジェクト)【社会開発分野におけるフィールドワークの技術的融合を目指して】2010〜2012年度 代表者:増田 研(長崎大学) 所員1/共同研究員14本研究課題は、文化人類学に隣接した今日的な実践的分野である社会開発における研究活動に必要とされるフィールドワークの技術的融合を目的とする。具体的には、(1)参与観察とインタビュー調査を中心とする文化人類学の方法論を、広い意味での社会調査のなかに適切に位置づける、(2)疫学・統計といった数量的調査および空間情報システム(GIS)によるアウトカムを、質的調査の成果と組み合わせる方法を模索する、(3)アジア・アフリカにおける人口静態・動態調査(Demographic Surveillance System)のアウトカムに対しての検討を適して技術的融合の可能性を探る、および(4)これらの技術を参加型開発の実践に応用する手法を見いだす、以上の4点を活動内容とする。社会開発分野においては人類学と同様に「フィールドワーク」を必要とするとはいえ、Rapid Ethnographic Method (Rapid Appraisal)のような、時間をかけずに手っ取り早く誠査を済ませる方法論が提唱されている。しかし我々は、このような「目的に向かつて単線的に進む調査手法」からそぎ落とされてしまう「ノイズ」にも注目し、従来型の地域の文脈に根ざした人類学的な手法、「問題をめぐって発見をあぶり出していく螺旋的思考運動」を、多様な分野における調査・分析方法と具体的データを事例に吟味し議論しつつ、新たなフィールドワークの方法論へと結びつけたいと考えている。こうした取り組みは、人類学における開発の分野だけでなく、国際保健分野などにおいて、いわゆる質的調査への需要が高まっているなかで、大きな意義を持つであろう。http://lalombe.icurus.jp/yugo_ken/■歴史学・地域研究系【インドネシア在地文書研究プロジェクト】2009〜2011年度 代表者:宮崎 恒二 所員2/共同研究員6本プロジェクトは、これまで日本でまったく用いられてこなかったインドネシア諸語による在地文書に焦点を当て、その全体像を把握とするとともに個々の写本ないし写本群のコーパスを構築し、それらを用いたインドネシア諸地域の歴史、文化、社会、言語の諸側面の解明を目指す。また、これらの在地固有言語による文書を資料として用い、かつその利用方法を確立することによって、植民地行政文書や口頭伝承に依拠した研究とは異なり、現地語による文字表象を通じた、新たな視点の開拓を目指す。さらに、個別文化の研究にとどまらず、広く文字文化一般、そして口承伝統と文字文化の関係についての考察も進める。三年間のプロジェクト期間を設け、第一段階として、インドネシア諸語による写本の全体像を解明すると共に、ジャワ語・ジャワ文字による写本を研究対象として取り上げる。【歴史的観点から見たサハラ以南アフリカの農業と文化】2010〜2012年度 代表者:石川 博樹 所員2/共同研究員15サハラ以南アフリカ諸国の経済停滞が国際的な懸案となっている現在、大多数の国々の基幹産業である農業についての研究を一層深化させることが国際的に求められている。これまで我が国におけるサハラ以南アフリカ農業研究は、主に農学、人類学、経済学の研究者によって実施され多くの成果をあげてきた。本研究課題においては、これらの学問分野の研究者に歴史学研究者も加わり、サハラ以南アフリカ諸地域の農業と文化の関連について歴史的観点からの研究を共同で実施 する。特に社会的・文化的に重要な役割を果たしてきたにもかかわらず未解明の課題が少なくない主食用作物に関わる史的諸問題を広範に検討することによって、サハラ以南アフリカ農業研究の新たな研究領域の開拓を試みる。http://www.aa.tufs.ac.jp/users/agriculture2010/

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