16共同利用・共同研究課題(共同研究プロジェクト)共同研究■人類学系【人類社会の進化史的基盤研究(2)】2009〜2011年度 代表者:河合 香吏 所員5/共同研究員18人類は生物分類学的には霊長目に属し、進化史的にはごく最近(約600〜700万年前)までチンパンジーやピグミーチンパンジー(ボノボ)といった大型類人猿とともに進化の過程を歩んできた。人類の社会性(sociality)の基盤はこれらヒト以外の霊長類との連続性と非連続性を検討することによってこ そ、より深く明解な人類学的理解が可能となろう。このプロジェクトは、長期的プロジェクトの第1弾として2005〜2008年度におこなわれた「人類社会の進化史的基盤研究(1)」におけるテーマ「集団」に続く第2弾として「制度」をとりあげるものである。ここでは、「制度は言語のうえに成立する」という一般に当然と思われている命題にたいして、音声言語をもたないヒト以外の霊長類に「社会」を認め、社会構造論や家族起原論などを展開してきた霊長類学の知見や理論によってこれを相対化する。そのいっぽうで、当該社会の成員の行為・行動のなかに制度の前駆的なありようをみとめ、言語を前提としない制度の可能性とその進化史的基盤を追究する。http://human-evo.aacore.jp/【多元的想像・動態的現実としての「華人」をめぐる研究】2011〜2013年度 代表者:津田 浩司 所員2/共同研究員7本研究は、今日主に東・東南アジアの各地で、ある一群の人々がどのように「華人であること」を生き、またどのような広がりでもって彼らなりの「華人世界」を思い描き、新たな関係性を構築しようとしているかを、多角的に明らかにすることを目的としている。言うまでもなく「華人であること」は、それぞれの地で歴史性を帯びた文脈依存的なものであり、また近年その「華人」たちを取り巻く環境も、東南アジアをはじめとする各国での政治状況の変化、国際地政学上の中国のプレゼンスの高まり、あるいはグローバル化のさらなる進展などを受け、大きく変わりつつある。本研究ではこうした事態を踏まえ、様々な出自や背景、文化要素を身に帯びた人々が、現在どのようなことを背景に、どのような「記憶」を(再)生産し、またそれによってどのような「我々の広がり」を想像し、かつ現実に立ち上げようとしているか、そしてそれが当事者もしくは外部者によってどのような意味で「華人」であると認識されるのか、その過程を具体的事例に即しつつ多元的に明らかにする。この作業を通じ、何らかの社会事象を学術的に「華人」と一元的に表象することの意義と限界を検討する。【「シングル」と家族—縁(えにし)の人類学的研究】2010〜2012年度 代表者:椎野 若菜 所員2/共同研究員21本研究は「シングル」とされる人間の存在とその生き方について、それと相反し強化しあうかのような存在である、当該社会における家族親族、またくわえて個々人に少なからず影響を及ぼす国家の存在との関係性を念頭に、縁(えにし)という言葉を手がかりに社会−文化人類学(以下、人類学と記す)の立場から追究するものである。現代社会における個人の生き方は多様化してきている。出稼ぎ、単身赴任、留学、宗教的理由、また被災、少子高齢化といった要因で頻繁に人は移動し分散し、こうした社会的環境の変化によってライフスタイルや人と人との関係性も大きく変化している。いったん崩壊したかにみえた近代家族だが、それをモデルにした擬似的な「家族的」なものを求め、近年、人々がつながりだしている事象がみられる。以上のような現代の事象をもとに、本研究はアジア・アフリカを中心に家族、社会の実態と、それらによって創出されたとも考えられる「シングル」の生きる戦術を明らかにする。さらにこうした作業により、固定されがちなシングルに対する現代的な社会理念、シングルの存在の対として位置づけられがちな理想像として生産される家族(像)について、人類学の立場から検討する。【東・東南アジアにおける地域間越境移住の人類学—結婚(離婚)移住ネットワークにみる文化・エスニシティとアイデンティティー】2010〜2012年度 代表者:石井 香世子(名古屋商科大学) 所員2/共同研究員13本共同研究課題では、東・東南アジア各地(日本・中国・韓国・香港・台湾・フィリピン・ベトナム・タイ・マレーシア・インドネシア)をフィールドとする内外の研究者を集め、東・東南アジア地域に近年発達しつつある、越境結婚/離婚移住ネットワークの多方向性・重層性・環流性について分析する。これまで人類学の分野では、東・東南アジア地域を対象とした移動研究・越境移動研究が数多く蓄積されてきた。しかし一方で、今日の越境移動の重要な一角を占める結婚移住に焦点を当て、その移動ネットワークの多方向性・重層性・環流性に注目して分析した研究は未だ少ない。ましてや、国際離婚にともなう離婚移住に着目した研究は皆無に近い。本研究ではこれらの越境移動事例に焦点を当てて研究することで、人類学の移動・移民研究分野において新たな知見を発見することが期待される。
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