AA研要覧 2011
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14共同利用・共同研究課題(共同研究プロジェクト)共同研究【節連結に関する通言語的研究】2010〜2012年度 代表者:渡辺 己 所員6/共同研究員16通言語的な比較対照研究は、単一の節(あるいは単一の節からなる単文)をもとにおこなわれることが多い。しかし、およそ自然言語であれば、実際の運用にあたっては複数の節が連続して現われる。その際の節のつながり方はさまざまで、大きくは等位的か従属的な連結が考えられる。本研究課題では、形態統語的に多様な言語を専門とする国内外の研究者を集めることにより、類型的に異なるタイプの言語がそれぞれにおいてどのように節を連結していくのか考察し、そこに節連結に関する類型的特徴、あるいは通言語的共通点を探るものである。さらに特に近年になり、形態統語的には従属節だと考えられるものが、自然談話のなかで主節なしで単独で現われる現象(「言いさし」、 “insubordination”)が通言語的に研究されるようになった。本研究課題ではこのような現象を含め、言語の実際の運用における節連結を視野におきながら研究を進める。なお、本研究課題は、特別経費「言語ダイナミクス科学研究プロジェクト(LingDy)」の活動の一環とする。【北方諸言語の類型論的比較研究】2010〜2012年度 代表者:呉人 徳司 所員5/共同研究員21本研究では,北東シベリアから北米にかけて分布する諸言語(以下,北方諸言語)の様々な文法現象に関する類型論的比較研究をおこなう。人類の移動のルートにあたるこの地域は,類型・系統を異にする言語の蝟集が世界的に見ても突出した地域として注目されている。それらの言語が示す類型的多様性は,語形成手段,文法関係の標示,語順,文法範疇など,形態論から統語論へと多岐にわたる。従来,北東アジアと北米では別個に研究が進められてきたが,これらの文法現象の中には大陸の新旧を越えた類似性を示すものもあり,両地域を総合的に捉える視点が重要である。本研究では,以下のような研究を行なっていく。1. 国内外の北方諸言語研究者の協力体制により、海外研究者にも協力を呼びかけ国際的な北方諸言語の類型論的研究を構築することを目指す。2. 特 別 経 費「 言 語ダイナミクス科 学 研 究プロジェクト(LingDy)」とも連携し,北方諸言語の記述の前提である言語データの加工と公開に取り組む。【インドネシア諸語の記述的研究:その多様性と類似点】2010〜2012年度 代表者:塩原 朝子 所員2/共同研究員14本研究は、「インドネシアの言語」の研究の進展を目的とし、以下の2つの活動を行う。I. 研究者が個別言語の文法記述によって得た知見を集め、インドネシア諸語に関して個別言語間の相違点/類似点を明らかにする。メインテーマは「インドネシアの言語の態」とし、各言語の記述データを元に個別言語の記述手法ならびに、類型論的、比較言語学的事柄について議論する。インドネシアの言語において文法の根幹を成す「態」に注目することによって、付随的に「情報構造の標示」「時制・相・法」なども含め、インドネシア諸語の実相が広い範囲で明らかになることが期待される。なお、参加者の関心に合わせて、短期的な「サブテーマ」も設定する予定である。II. 特別経費「言語ダイナミクス科学研究プロジェクト(LingDy)」と連携し、I の言語記述の前提である言語データの加工と公開に関わる作業を行う。なお、対象言語は、インドネシア国内で話されているオーストロネシア語を中心とするが、系統的特徴を共有するオーストロネシア諸語、地域的特徴を共有するパプア諸語も射程に入れる。http://lingdy.aacore.jp/jp/workshops-studygroups/typology-and-comparative-linguistics-of-indonesian-languages.html【ダイクシス表現の多様性に関する研究】2010〜2011年度 代表者:林 徹(東京大学) 所員1/共同研究員5指示詞、代名詞、人称や時制の標識などの空間ダイクシス、人称ダイクシス、時間ダイクシスに関する表現は、言語の基本的要素であるにもかかわらず、意味を明確に説明することが極めて困難である。その理由は、言語が発せられる状況が意味と緊密に結びついているからである。本研究課題は、性急に一般化を求めることなく、手話を含めたアジアの諸言語に見られるダイクシス表現のさまざまな用法を、定型表現など非ダイクシス的用法も含めて、できるかぎり詳細に検討し、アジアの諸言語におけるダイクシス表現の信頼できる概説を作成する。また、これと並行して、従来母語話者の内省報告に偏っていた嫌いのある言語データを多様化するために、新たな調査法を考案し試行する。

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