29共同研究概 要研究「コーパスに基づく言語学教育研究拠点」(Corpus‐based Linguistics and Language Education: CbLLE)は、東京外国語大学大学院総合国際学研究科とAA研との連携による「グローバルCOE」(GCOE)プログラムで、2007(平成19)年度から5年間の予定で実施されています。ここでいう「コーパス」とは、言語資料に発音・文法・方言・文体など分析に必要な情報(タグ)を加えて構造化したデータの集合体を指し、「コーパスに基づく言語学」とは、自然言語処理を中心とするコーパス言語学より広く、「コーパスデータに基づいた実証的、経験主義的な言語研究」を意味します。CbLLE では、「フィールドからコーパス構築へ、さらに教室での応用へ」をスローガンとして、フィールドでの一次資料収集、デジタル化、コーパス構築、コーパスの言語学的な分析から言語教育への応用を一貫したプロセスと捉え、そのための研究、教育、開発環境の充実を目指します。この目標を達成するために、次の3つの班を設置しています。・フィールド言語学班:記述研究が十分進んでいない言語を記述し、コーパスの構造に指針を与えるような研究を行います。・コーパス言語学班:言語資料のデジタル化が未発達な言語を対象に、コーパスの構築と、機械可読辞書(MRD)など言語資料を扱うのに不可欠なツールの開発に資する研究を行います。・言語情報学班:資料のデジタル化が十分進んだ言語を対象に、分析ツールの開発、機能別コーパスの構築、コーパスを利用した言語教育法や教材の開発などの応用研究を行います。研究の成果をもとに、3つの分野の手法をバランス良く習得した人材の育成を行うことも、CbLLE の主要な目的の1つです。そのために、次のような教育プログラムを実施しています。・主に博士後期課程の大学院生を対象に研究プロジェクトを公募し、調査やコーパス構築・利用の経験を積ませます。・3つの分野の第一線の研究者と大学院生が共同で講演・研究発表を行います。・国内外の学会における若手研究者の研究発表を支援します。http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/training/コーパスに基づく言語学教育研究拠点(CbLLE)フ ィ ー ルド~コ ー パ ス~教育コーパスに基づく言語学教育研究拠点(CbLLE)Fieldling フィールド言語学コミュニティ持ち寄り2. 分析のスキルアップを目的としたワークショップ3. 現地調査で得た資料や研究成果の刊行4. フィールドワーカー同士が情報・知識を交換できる記述言 語研究コミュニティ・ウェブサイトの構築と運営5. 言語の記述的研究について広く理解してもらうための一般 向けウェブサイトの運営、などがあります。■『文法を描く-フィールドワークに基づく諸言語の文法スケッチ-』:実際に収集したデータをもとに、各メンバーが専門としている言語の姿を、言語の概略、音声・音韻、形態論、文の構造、テキスト資料という項目に分けて、1言語につき30ページ程度でまとめました。現在第2集まで刊行しています。http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/training/Fieldling は、記述言語学に携わる若手フィールドワーカーが主体となって所属研究室の枠を越えた協力体制を構築するための共同研究プロジェクトです。2005(平成17)年にAA研を基地として活動を開始して以降、メンバー自身の企画・提案により、さまざまな研究会やワークショップを行なっています。2008(平成20)年度からは、言語ダイナミクス科学研究プロジェクトの枠内に運営基盤を置き、これまで以上に活発な活動を展開しています。主な活動には、1. 各メンバーが研究対象の言語データを持ち寄り、具体的な トピックに絞って議論する研究会Fieldling フィールド言語学コミュニティ
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