AA研要覧 2001
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27長期研究者派遣 アジア・アフリカの言語文化の研究にとって,各地域で話されているさまざまな言語の習得が必須であることは言うまでもありません。本研究所では助手等の若い研究者をそれぞれ2年の期間,アジア・アフリカの諸国に派遣しています。この現地投入は,言語を自由に話し,あるいは読み,書く能力を獲得するだけでなく,長期間現地の生活にとけこむことによって,その地域の文化や歴史の研究に対する幅広い視点を身につけることを目的としています。この計画は1967年から実施され,現在までに合計36名が派遣されました。 1967-69 石垣幸雄(エチオピア),守野庸雄(タンザニア) 1969-71 松下周二(ナイジェリア),家島彦一(アラブ連合) 1971-73 内藤雅雄(インド),中野暁雄(モロッコ,南イエメン) 1973-75 福井勝義(ソマリア),中嶋幹起(香港) 1975-77 加賀谷良平(ボツワナ),湯川恭敏(タンザニア,ザイール) 1977-79 石井 溥(ネパール),藪 司郎(ビルマ) 1979-81 羽田亨一(イラン,トルコ),清水宏祐(アラブ連合,イラン,トルコ) 1981-83 山本勇次(ネパール),新谷忠彦(ニューカレドニア) 1983-85 辻 伸久(中国,香港),水島 司(インド) 1985-87 中見立夫(中国,モンゴル),梶 茂樹(ザイール,ケニア,ザンビア) 1987-89 松村一登(フィンランド,ソ連),宮崎恒二(オランダ,インドネシア) 1989-91 林 徹(中国,トルコ),栗本英世(エチオピア,ケニア) 1991-93 栗原浩英(ベトナム,ロシア),峰岸真琴(インド) 1993-95 新免 康(中国,独立国家共同体,イギリス),根本 敬(イギリス,タイ) 1995-97 飯塚正人(エジプト,イギリス),黒木英充(シリア,フランス) 1997-99 吉澤誠一郎(フランス,イギリス,中国,台湾),西井凉子(タイ,イギリス) 1999-2001 澤田英夫(オーストラリア,インド),本田 洋(韓国,イギリス) 2001-2003 床呂郁哉(スペイン,オランダ),呉人徳司(アメリカ,ロシア) 南原の邑内地区(旧市街地)にある二つの建物 この二つの建物の共通点はなにか?かたや純朝鮮風の廟,かたや日本風の切妻造の二階建てであるが,いずれも日本による植民地支配期に建てられたものである。右はパンソリ『春香歌』の主人公を祀る祠堂で1931年に創建された。妓生たちが年一回ここで行っていた祭祀は,今日南原女子高等学校の生徒たちによって受け継がれ,一大郷土祝祭,春香祭の始まりを告げる行事となっている。一方,左は1930年代に街路整備の進んだかつての目抜き通り(当時は「本町通」と呼ばれていた)にある,日本人雑貨商清水の旧店舗である。解放後は官に接収され,一時期は右派政治団体である大韓青年団によって使われていたが,今日では一階が食堂,健康食品店,軽食屋,洋品店に,二階の一部が茶房になっている。郷土史作りという運動によって,一方は主役を与えられながらも微妙に意味づけを変え,他方は顧みられることはなかったが朽ち果てずに今を生きている。(韓国全羅北道南原市,右は1999年10月,左は2000年2月,本田洋撮影)

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