19 人類社会における性と性差の問題へのアプローチに関しては,ジェンダーとセクシュアリティという2つの用語で代表される関心のあり方の差異がある。この共同研究では,広くアジアとアフリカの諸社会を見渡しつつ,ジェンダーとセクシュアリティの社会的編制や性的イメージの構成について,国家および地域的・家内的経済といったマクロな規制とミクロな対面行動の架け橋あるいはバトルフィールドとなる議論を展開し,これまでの人類学的研究から歩を進める。 足羽與志子 河合香吏 栗田博之 小泉順子 菅原和孝 田辺明生 沼崎一郎 速水洋子 松園萬亀雄 牟田和恵 人類学においては個人対社会,主観対客観といった二項対立的な問題設定を前提としていることが多い。この共同研究プロジェクトは,こうした前提を超えて,いかに人々の経験のリアリティを捉えることができるのかについての,人類学的な理論的展望をひらくことを目的とする。ここでいう社会空間とは,主体の実践のスペース,もしくは実践において他者と相互作用しつつ構築する社会関係の総体をさす。そこにおいては,実践主体はいかに重層する諸関係とかかわりながら自己を維持し構成するのかが問題となる。そこからあらためて,社会的なるものが問われることになろう。このような社会科学の中心的ともいえる課題を追求するために,研究会は人類学者を中心としながらも,心理学,社会思想等の隣接分野の研究者の参加をあおぎ,学際的な共同作業による理論の構築をめざす。 本プロジェクトでは,こうした課題を追求するにあたり,宗教といった現象に焦点をあわせることで,個々のメンバーの事例報告の羅列に終わることを避け,より議論を建設的に深めようとする意図をもっている。高度経済成長に伴う大衆消費社会の出現,情報社会化,国際化のなかで,人々は宗教的な実践を多様化,差異化させている。このような宗教,あるいは宗教的なものの経験をとおして,再編成されていく社会関係のあり方を考察することは,社会空間の概念を歴史的文脈において検討することを可能にするものと思われる。 今村仁司 高木光太郎 高崎 恵 田中雅一 田邉繁治 田村愛理 土佐桂子 當眞千賀子 平井京之介 箭内 匡 ポンサーリー県はラオスのなかでも最も民族・文化が複雑に入り組んだ地域であり,同時に,最も開発の遅れている地域である。従って,伝統文化は比較的よく保存されており,我々の複合民族文化交流圏の研究にとっては理想的なフィールドを提供してくれている。本プロジェクトでは,この地域の言語及び物質文化を取り上げ,この県における複合文化交流メカニズムの全体像を明らかにせんとするものである。 加藤高志 園江 満 アジア・アフリカにおけるジェンダーとセクシュアリティ (主査:内堀基光/所員5,共同研究員10)社会空間と変容する宗教 (主査:西井凉子/所員8,共同研究員10)ポンサーリー県の言語文化学的研究 (主査:新谷忠彦/所員2,共同研究員2)
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