AA研要覧 2001
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18 目的: 18世紀に始まった近代活版印刷で用いられてきた漢字字体の変遷を分析することによって,次の点を明らかにする事をめざす。 (1)いわゆる康煕字典体 (2)慣用字体 (3)明朝体の基本設計 また,この研究を通じて,新JISコードの代表的字体の決定に学問的根拠を与えるとともに,国語審議会での問題となっている漢字字体問題の学問的根拠にも寄与することをめざす。 研究方法: 康煕字典及び18世紀以降の活字総数見本帖を収集し,一字毎に字体対照データベースを作成し,このデータベースの検討を通じて,上記の研究目的を達成する。 成果物: 研究成果物は,新JIS漢字コードの代表字体に活かすとともに,JIS X 0208の将来の改正で用いることのできる代表字体の決定の基礎資料とする。個別字体検討資料は,各社での字体設計の基礎資料として用いることができる資料の作成をめざす。また,国語審議会で検討されている表外字の字体検討に対しても,学問的基礎を与えることをめざす。 最終的な報告は,単行本として刊行することも予定する。 池田証壽 石塚晴通 小池和夫 小駒勝美 境田稔信 鈴木広光 直井 靖 比留間直和 府川充男 紀元前数世紀に現れ8世紀から確固たるものとなり,インド亜大陸を挟んで東アフリカからアラビア地域と東南アジア地域とを結ぶ交易や移住や巡礼による人と物との移動が生み出した文化・社会的に多元的でありかつ歴史的に重層的なネットワークこそが,インド洋海域世界である。この海域世界は,16世紀以降のヨーロッパ世界のインド洋への進出とそれに伴う近代世界システムの確立によって破壊されるどころか,それがもたらした植民地化や奴隷制や契約移民制は新たな人々の出会いを促進し流動性を高めまた居住地域を拡大した結果,その多元性と重層性をより一層複雑化させると共に動態的な性格を加速することとなった。それゆえ,インド洋においては,ブローデルの『地中海』やA.リードの『交易時代の東南アジア』に示された包括的かつ微視的な歴史学の視点がとりわけ有効性を持つものである。 本プロジェクトにおいては,個別文化・社会の研究の成果をインド洋海域世界の歴史的成立とその展開の通事的研究に導き入れることおよびその通事的視点を共時的な個別文化・社会研究に導き入れることにより相互の研究を深化させることの可能性を,歴史学・言語学・人類学はもとより考古学・技術史・栽培植物学などの学際的視点から討議を重ねてゆくことを目標として措定している。さらに,多元的かつ重層的に形成・展開されてきたインド洋海域世界についての考察は,局所的な地域研究に寄与するのみならずグローバル化する現代世界の中における多元・多文化的な人の在り方に対し具体的なモデルを提示することあるいは国民国家・領域国家とは異なる組織のモデルを提示することをも招来するものである。 本プロジェクトの成果は,フィールドワークに基づいたインド洋海域世界の個別文化・社会についての記述的なモノグラフおよびインド洋海域世界像に迫る論考集あるいは画像集として公開してゆく予定である。 秋道智彌 飯田 卓 飯田優美 門田 修 川床睦夫 崎山 理 杉本星子 高桑史子 田中耕司 富永智津子 花渕馨也 堀内 孝 松浦 章 森山 工 インド洋海域世界に関する発展的研究 (主査:深澤秀夫/所員4,共同研究員14)活字字体史研究 (主査:芝野耕司/所員2,共同研究員9)

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