15 近年における国際情勢の変化と学術交流の発展によって,われわれ歴史学研究者は東アジア各地域の文書館・図書館などに所蔵される一次資料に対し,以前とは比べられないほど容易に接近できるようになった。さらに,現地学界でも,あらたな歴史評価・研究動向がおこり,われわれの研究への刺激となっている。ただ対象とすべき史料の量があまりに膨大で,その実態を体系的に把握してはいない。 また,個別の研究が深化するとともに,より大きな視野のもとに,問題をとらえなおし,分析枠組みを再検討することも必要である。さらに海外学界との共同研究,史料調査も,双方にとって,より具体的で実りの多い形で推進しなければならない。 本プロジェクトでは,このような研究状況を念頭におきながら,18世紀から20世紀初頭の東アジア世界各地域における社会の変容が,外部世界とどのように有機的に連関していたかという問題を中心にすえ,文書史料によりそれがどこまであきらかにできるか検討する。東アジアに関する史料と研究情報の開かれたフォーラムをめざしている。 毎回テーマをかえながら,海外からのゲスト・スピーカーもまじえ,シンポジウム形式で研究会を開催し,また『東アジア史資料叢刊』などの出版物も刊行している。 赤嶺 守 石濱裕美子 井上 治 井村哲郎 江夏由樹 岡 洋樹 岡本隆司 尾形洋一 小野和子 笠原十九司 加藤直人 岸本美緒 楠木賢道 新免 康 菅原 純 坪井善明 寺山恭輔 中村 義 西村成雄 萩原 守 浜下武志 原 暉之 藤井昇三 細谷良夫 松重充浩 毛里和子 森川哲雄 森山茂徳 柳澤 明 吉澤誠一郎 現在の西南中国は,もともと非漢族の居住地域であり,中国歴代王朝の支配下に少しずつ組み込まれていく歴史をもつ地域である。元明清を通じて,漢民族移民の増大と歴代王朝の統治政策によって,多くの非漢族が中央政府に直接支配されるようになり,そのことによって民族移動が激しくなり,非漢族の土着社会に大きな変容がおこり,東南アジア大陸部へ移住する非漢族も出現した。だが,従来この歴史過程を総合的に分析する研究は僅少であった。 本プロジェクトの目的は,(1)西南中国非漢族の歴史に関する研究発表,(2)史(資)料の発掘・収集・整理をおこなうことによって,従来注目されることのなかったこの地域の歴史に対する研究を促進することにある。なお,方法論として非漢族を主体とした分析視点を重視すると同時に,歴史学者以外に文化人類学,民族学,民俗学,言語学などの専門家の参加によって学際的なアプローチの構築をめざす。 なお,本研究所の「歴史・民族叢書」では,『雲南少数民族伝統生産工具図録』,『四川の考古と民俗』及び『西南中国伝統生産工具図録』を刊行している。 井上 徹 上田 信 上西泰之 菊池秀明 岸本美緒 末成道男 武内房司 多田狷介 谷口房男 張 士 陽 塚田誠之 寺田浩明 林謙一郎 吉野 晃 渡辺佳成 渡部 武 東アジアの社会変容と国際環境 (主査:中見立夫/所員3,共同研究員30) 西南中国非漢族の歴史に関する総合的研究 (主査:クリスチャン・ダニエルス/所員5,共同研究員16)
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