AA研要覧 2001
15/35

13 21世紀を目前に控えた今日,地球社会は「グローバル化」を求める言説に席巻されている観がある。規制緩和と公正な市場競争によって個人の努力が正当に報われる社会を実現しようという主張である。だが現実には,競争から脱落する不幸な人々の群れが目につく一方,グローバル化の先にいかなる未来が待っているのか,明確なヴィジョンを誰も示し得ずにいる。内外を問わず,ある種の閉塞感が蔓延するゆえんである。 本プロジェクトは,このような閉塞感を打破すべく,アジア・アフリカの政治文化に焦点を当てる。アジア・アフリカはすでに19世紀から植民地化という名の,西欧的体系への規格化・標準化を経験しており,現在進行中のグローバル化に対しても適合と反発,両方の対応を見せている。すなわち,本プロジェクトの目的は,アジア・アフリカの様々な政治文化を多角的に調査・研究することを通じて,一般に流布しているグローバル化の言説を相対化し,地球社会の文化創造のための新たなパラダイムを提示することにある。 この目的を達成するため,本プロジェクトでは6つのサブグループを設置する。(「近代国家機構の形成」「ナショナリズムとインターナショナリズム」「多民族統合メカニズムの比較」「言語共同体と言語政策」「移動と越境」「国家・宗教・市民社会」)。これにより,アジア・アフリカにおける多様な政治文化の成立過程を明らかにし,国家を軸とする画一性と多様性との拮抗関係を探り,国家の枠に収まらない様々な動きや組織の現状を捉えることができると考える。 赤嶺 淳 粟屋利江 李 妍淑 井坂理穂 伊藤 眞 遠藤 貢 王 柳蘭 大石高志 大林 稔 落合雄彦 粕谷 元 勝俣 誠 桐山 昇 楠瀬佳子 栗本英世 高 榮珍 小泉真理 小杉 泰 近藤光博 佐藤 章 佐原徹哉 嶋田義仁 鈴木 茂 砂野幸稔 芹澤知広 武内進一 竹沢尚一郎 竹村景子 田中雅一 津田みわ 長津一史 西村俊一 子島 進 信田敏宏 濱元聡子 林 行夫 速水洋子 稗田 乃 牧野久美子 松田素二 溝上富夫 宮本正興 村田奈々子 森 孝一 吉國恒雄 吉澤誠一郎 吉田憲司 モアペ・フェンソン・アラム アジア・アフリカにおける政治文化の動態 (主査:栗原浩英/所員18,共同研究員48)ナバテアの墳墓群 ヨルダンのペトラを都としていたナバテア人が南下して遺した墳墓群。峡谷を穿って作られたペトラ遺跡とは異なり広大な砂漠に数多くの巨大な墓が点在する。発掘作業の都合だろうか,埋め戻された人骨が散らばっている上に,未だに墓として使われている形跡さえあり,甘い死臭が漂っている。ここを管轄するアル・ウラ市の博物館長は「第二のペトラ」にしたいと言っていたがその日は果して来るだろうか。(サウジ・アラビア王国マダイン・サーレフ。2000年2月10日。小田 淳一)

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る