114. これまでの主な成果 センター開設から2001年3月で満4年がたちましたが,これまでに作成済み・作成中の主な公開資産を下記に紹介いたします。http://irc.aa.tufs.ac.jpにアクセスされ,どうぞご覧になってみてください。 (1)三省堂『言語学大辞典』データベース 現代言語学の最高水準を示すものとして,国際的に注目されている辞典の全文検索です。この辞典の執筆には,AA研の所員が多数関わっています。現在はごく一部分を試験的に公開していますが,今年度中に大幅増の予定です。 (2)オスマン朝演劇ポスター AA研が所蔵する19世紀~20世紀初頭のイスタンブルの演劇ポスターです。当時のイスタンブル演劇文化・劇場都市としてのイスタンブルの性格を物語る世界的にも他に類例を見ない見事なコレクションです。 (3)『国語学』展望データベース 国語学会機関誌『国語学』が2年ごとに特集する「学界展望」のデータベースです。海外の日本語研究サイトからの参照も続いているきわめて高速な検索が実現されています。 (4)『浅井文庫』台湾諸民族関連資料 AA研が所蔵する故・浅井恵倫教授採録の台湾原住民の言語文化に関する貴重な動画,写真,語彙集,用例集,フィールドノートなどのコレクションです。中華民国(台湾)中央研究院言語学研究所との共同研究によって,シラヤ語を含む土地契約文書などの解読が進められています。 このほかに,「タロ芋データベース」「ヒンディー語形態素解析・辞書」「言語調査票」「カイロの肖像・19世紀」「ヒンディー語テキストコーパス」「チベット地図/人名・地名索引」など多数あります。今後も一層コンテンツを充実させていく当センターにご期待ください。 5.デジタル言語文化館 センターの研究活動の成果は,世界に向けて開かれていなければ無意味です。このため,センターは,「デジタル言語文化館」を構想しています。「デジタル言語文化館」は,当面はwww(HTTP)で訪問・利用できる形で提供されますが,媒体には拘束されません。 「デジタル言語文化館」は,単なるコンテンツの羅列ではなく,その加工技術・呈示技術とその背景の理論化自体もコンテンツとなる点が特徴であり,蒐集展示と,蒐集資料・技術の工具利用の両方がおこなえるところが,従来のデジタルライブラリ(電子図書館)発想を包含しつつ,それを越える点です。 6. 技術と研究の相互発展 センターは,望まれる技術の要求仕様を策定するのであって,技術自体を開発する場ではありません。望まれる技術とは,新しい技術の呈示によって技術への需要自体を呼びおこし,その結果,新たな研究工具を提供することで研究開拓のきっかけとなるような技術であり,すなわち,今は「技術的制約によって無理」と諦められ,研究分野自体が研究として認識されていないものを,明らかにするような技術を指します。 研究者の主体的発想による技術仕様の策定は,本センターのように,言語・歴史・民族・情報の各分野の専門研究者を擁し,技術と研究の相互刺戟を主眼として研究を進める専門機関によって,はじめて生れ得る成果と言えましょう。
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