9 卓越した研究拠点(COE) アジア・アフリカ言語文化研究所は,平成7年度の文部省「中核的研究機関支援プログラム」の発足以来,「卓越した研究拠点」(COE: Center of Excellence)に指定されている。本研究所では,このプログラムによる事業の重点を,学術研究の情報化と国際化に置いている。 情報化の側面では,インターネット等,情報化社会における新たな環境に対応すべく研究資料や研究成果のデジタル化による公開を進めている。平成7年度~9年度には「研究高度化推進経費」により,「アジア・アフリカ諸民族の画像・音声・テキスト・データベースの基礎的研究」を行い,平成9年度には「先導的研究設備費」により,「言語文化研究支援音声・画像信号等変換システム」を導入した。さらに平成10年度からは3年計画で「研究高度化推進経費」により,「アジア・アフリカ言語文化に関する電子事典の構築」を実施した。これらの研究を基礎として,言語学,歴史学,人類学の諸分野において蓄積されてきたフィールド資料(テキスト,音声,画像など)をデータベース化し,インターネットを通して公開する事業を推進することにより,アジア・アフリカ地域に関わる国内外の研究者に,良質かつ最新のデータを提供することが可能になってきている。 国際化の側面では,「国際シンポジウム開催経費」によって,国内外の先端的な研究を行っている研究者を招へいし,国際シンポジウムを開催している。平成8年度には「東南アジアにおける人の移動と文化の創造」(8年12月3日-5日),平成10年度には「音調の通言語的研究」(10年12月10日-12日),平成11年度には「南アジアにおける言語接触と収束的発達」(11年12月6日-9日),平成12年度には「音韻の通言語的研究」(12年12月12日-14日)を開催した。今年度は「非主格の「主語」をめぐって」(13年12月18日-21日)の開催を予定している。また,「外国人研究員経費」により,主として情報化の専門知識を有する国外の優秀な研究者を招へいし,所員との間で共同研究を進め,研究の情報化,国際化を推進している(24頁参照)。 このような事業を推進する上で,専門知識を有する若手研究者の力は欠かせない。「COE非常勤研究員経費」により採用された非常勤研究員は,各々の研究テーマに基づく個別研究を進めつつ,ネットワーク環境の整備,ホームページの作成・維持管理,データベース構築の支援,国際シンポジウムのサポートなどを行っている。 平成13年度からは,中核的研究拠点形成プログラム「アジア書字コーパス拠点」(GICAS: Grammatological Informatics based on Corpora of Asian Scripts)が5年間の予定で新たに発足した。このプログラムは,アジアの文字資料のコーパス構築を通じて,文字情報処理の技術的洗練,言語文化資源の情報化を行い,アジアの文字情報学の国際的研究拠点を確立することが目標である。 このように支援と形成という,卓越した研究拠点の二つのプログラムに関わる本研究所への期待は大きく,その責任も極めて重い。本研究所は,その重責を果たし,アジア・アフリカに関する言語学,歴史学,人類学,情報学などの分野の国際的な学術研究機関として,世界に貢献することをめざすものである。
元のページ ../index.html#11