18 本研究所では,1978年にメインフレーム・コンピュータを導入して以来,アジア・アフリカの言語文化に関する多言語多文字のテキストデータを入力・処理して研究成果をあげてきた。また,その課程で蓄積されまたされつつあるアジア・アフリカ諸語の言語データ(テキスト,辞書など)の情報資源は,各専門分野での今後の研究にとっても価値の高いものが多く含まれる。特に本研究所の設置目的のひとつである「アジア・アフリカ諸語の辞典編纂」事業に沿って刊行された各種辞典の資源は,成果として印刷出版されたもの以上に,国内外の不特定多数の研究者・学習者による利用の可能性を秘めている。 しかし,これらの蓄積されてきた情報資源の内容形式・利用形態は,メインフレーム・コンピュータに依存していることが多く,今日のようなネットワークを前提とする研究環境に必ずしも対応していない。そのため利用者の立場から見ると,以下のような使用上の限界や制限が指摘できる。 (1)マシーンの操作に関する専門的知識が必要である (2)テキストデータに使用されている文字コードが特殊である (3)研究成果は主にプリンタへの出力を前提にしている 本プロジェクトは,メインフレーム・コンピュータに従来蓄積されてきたテキストを中心とする情報資源のこうした限界や制限を克服して,公開化を前提とするより汎用的な利用に備えることを目的としている。 本プロジェクトが計画している主な研究および作業は以下のとおりである。 (1)移植性の高い多言語多文字コードの研究 (2)データフォーマットの研究 (3)入力・点検が未完なデータをチェックし対応する (4)利用形態の研究 (5)検索を含む各種ツール類の研究 公開化に関しては,本研究所の情報資源利用研究センターと協力して,利用の条件や形態などを考慮して実施する。その際,著作権の問題には特に留意する。 石川 巌 梅田博之 大江孝男 大原良通 坂本恭章 武内紹人 中野暁雄 永田雄三 奈良 毅 林佳世子 林 徹 星実千代 この共同研究の目的は,歴史的脈絡でのイラン,すなわち<大イラン(the greater Iran)>という枠組みのなかで,<イラン的要素>とは何かについて,言語・歴史・文化・思想などの総合的な視野のなかで問いかけを試みることにある。具体的な研究方法としては,イスラム世界におけるイラン世界の位置付け,イラン世界と他世界(例えばトルコ・クルド・アラブ・インドなど)との相互関連や差異を考察することによって,イラン的要素の全体像を浮き彫りにしていく。その結果として,われわれが漠然と抱いていた現代及び過去のイラン・イメージについて,その言語・文化・社会の特質や問題を改めて問い直し,イスラム研究に新たな方向を見出したいと考えている。 第一年度目と第二年度は,基本的な問題の設定,各々の共同研究員による事例研究を通して,イラン的要素に関する特質や問題を発見していきたい。特に,第二年度における研究課題として,イスラム以前におけるイラン的要素とイスラム以後のイラン的要素の比較,シーアとイラン的要素との関わりなどについて考察する。第三年度目は,本プロジェクトの最終年度にあたるので,歴史的イラン世界と現代イラン世界との間にみられるイラン的要素の差異と共通性について議論を深めて行きたい。なお,本プロジェクトの総括として,2000年秋に,「歴史の中のイラン-その文化・社会の特質-」と題して,公開講座の開催を計画している。 今澤浩二 小名康之 川瀬豊子 北川誠一 近藤信彰 清水和裕 寺島憲治 縄田鉄男 間野英二 山内和也 山口昭彦 吉田 豊 歴史的イラン世界に関する研究 (主査:家島彦一/所員4,共同研究員12)アジア・アフリカ諸語の電子辞書の構築 (主査:町田和彦/所員17,共同研究員12)
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