10 4. デジタル言語文化館 センターの研究活動の成果は,世界に向けて開かれていなければ無意味です。このため,センターは,「デジタル言語文化館」を構想しています。「デジタル言語文化館」は,当面はwww(HTTP)で訪問・利用できる形で提供されますが,媒体には拘束されません。 「デジタル言語文化館」は,単なるコンテンツの羅列ではなく,その加工技術・呈示技術とその背景の理論化自体もコンテンツとなる点が特徴であり,蒐集展示と,蒐集資料・技術の工具利用の両方がおこなえるところが,従来のデジタルライブラリ(電子図書館)発想を包含しつつ,それを越える点です。 5. 技術と研究の相互発展 センターは,望まれる技術の要求仕様を策定するのであって,技術自体を開発する場ではありません。望まれる技術とは,新しい技術の呈示によって技術への需要自体を呼びおこし,その結果,新たな研究工具を提供することで研究開拓のきっかけとなるような技術であり,すなわち,今は「技術的制約によって無理」と諦められ,研究分野自体が研究として認識されていないものを,明らかにするような技術を指します。 研究者の主体的発想による技術仕様の策定は,本センターのように,言語・歴史・民族・情報の各分野の専門研究者を擁し,技術と研究の相互刺戟を主眼として研究を進める専門機関によって,はじめて生れ得る成果と言えましょう。 ◆元肖節の夜 農歴(伝統的な太陽太陰暦)で正月十五日,つまり新年最初の満月の晩は,元肖節である。台湾各地では,盛大な祭りが繰り広げられる。あらゆる廟からそれぞれの神像を荷ったみこしが出るほか,けたたましい爆竹の音が耳をつんざく。仏具商の同業団体は「天下第一軍師諸葛亮孔明」と書かれた山車を走らせ,それらしい扮装の人物も登場する。たぶん,孔明のもつ払子(ほっす)が仏具の一種だから,仏具商の出し物となるのだろう。 (中華民国台東市。1999年3月2日。吉澤誠一郎)
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