AA研要覧 1999
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アジアの複数の言語・表記系の混在する環境で,多言語共存電子メール・wwwページ等を正しく表示し,多言語対照テキストデータベース,対訳辞書などを編纂・検索するためには,文字コードを曖昧さなく運用し,それに基づく文字列操作(stringmanipulation)・文字列照合(collation)をおこなうことは,必須の要素である。にも拘わらず,現状の国際文字コード(符号化文字集合)とそれに基づく計算機システムでは,これらアジアの諸言語の文字列操作・照合に対する配慮が十分でなく,提案されている諸システムも,安定的な運用をおこなうには不十分で,現に,現行のUnicode・ISO/IEC10646-1に基づく安定運用がおこなわれているシステムは見出し難い。本プロジェクトでは,こうした現状を打開し,新たに,将来にわたっての安定運用が可能な国際的な提案をおこなうために,下記の4点について,現状の問題の明確化と,それに対する対案を提案するための基礎的研究をおこなう。情報交換での識別(identification)の概念の洗練と,それに基づく符号化文字集合における文字・字体・字形の洗練アジアの複数の言語・表記系(例:タイ,カンボジア,ウルドゥー,ドラビダ,ペルシャ,デーバナーガリー,漢字)が共存する環境で,曖昧さなく運用可能な文字コード(符号化文字集合)の策定,およびその運用方法の策定 文字列データに対する基本的な操作(manipulation)の定義。即ち,文字列に対する基本的な操作である文字検索,「一文字」の削除・追加などについての,実装方法を考慮した定義複数の言語・表記系が共存する環境での,文化的に正統な文字列の整列(sorting)・照合(collation)の方法文字列出力(presentation forms)平成11年度は,本プロジェクトが扱う問題の現状を,参加者それぞれの専門分野について,ネットワーク環境に力点をおいて調査し,それを非専門家にも理解できる形で文書化してネットワーク等で公開する。池田証寿太田昌孝安岡孝一多言語共存環境における文字コードと照合(collation)系についての研究(主査:豊島正之/所員7,共同研究員3)15◆ジャータカのレリーフミンガラーゼーディーは13世紀後半に建立されたパゴダで,外壁にジャータカ(釈迦本生譚)各譚の場面が彫られている。表面が削られているのは,モンゴル軍によるパガン朝滅亡の際の損壊であろうか。加えて,今世紀になって少なからぬ数のレリーフが持ち去られたという。下に書かれた文字は,現在のビルマ文字と異なる方形である。(上ビルマ,旧パガン郊外。1991年4月撮影。澤田英夫)

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