30Field+ 2013 01 no.930Field+ 2013 01 no.9 ガーナ南部地方の都市を歩くと、ヘアサロン(以下サロン)の数と華やかさに驚かされる。例えば首都アクラ郊外の町マディナの場合、2km四方に400店以上ものサロンがある。オレンジ色やピンク色、緑色に薄紫色と、色とりどりに塗られたサロンには、さまざまな髪型の看板がかかり、“Queens of Beauty” “New Creative”など、魅力的な髪型や美容師の腕をアピールする店名が並ぶ。サロンの奥の「秘密」 アフリカ系の人々には球状毛という、細かく縮れた髪質が多い。手を加えなければ房状にもつれてドレッド・ロックに、櫛を通せばふわふわのアフロ・ヘアになる。ただし髪が絡んでいるため、毎朝とかすのも痛くて大変だ。髪を束に分けて糸で巻いたり、金属製のコテで伸ばしたりする方法もあるが、糸巻きは近代的な職場には合わないと考えられているし、コテは火傷が多いうえ、汗などわずかな湿気でも髪が元に戻ってしまう。 この球状毛を柔らかく伸ばし、女性を髪の悩みから「解放」したのが、ヘア・リラクシングと呼ばれる一種のストレート・パーマ(以下パーマ)技術だ。アクラでは1980~90年代に普及し、おしゃれに敏感な10代後半~30代の女性に圧倒的に支持されるようになった。パーマをかけた髪は毛糸のように素直になり、ストレートもカールも、櫛先ひとつで思いのままになる。汗で髪が縮んでしまうこともない。 パーマ後の髪は直線状に伸びきってしまうため、洗髪のたびに専用のローションをつけてカーラーで巻き、ドライヤーで乾かし、ポマードをつけて整える必要がある。女性の髪型が頻繁に変わるのは、彼女らがパーマをかけ、自宅ではなくサロンサロンと美容師の卵たち。美容師になるには、サロンで2~3年間の徒弟修行を行うのが一般的。髪の根元部分にパーマをかける作業。薬剤は刺激が強いが、実際には耳カバーや手袋を使わないサロンも多い。パーマをかけた髪は、櫛とヘアピン数本だけで簡単に結うことができる。写真ではさらに前髪とうなじの髪をコテで巻き、スプレーで仕上げている。自然状態のアフロ・ヘアを糸巻きにする様子(出典:Sagay, African Hairstyles Heinemann, 1983)。Field+FASHIONヘアスタイル自由自在ガーナ都市部の髪結い事情織田雪世 おだ ゆきよ / 元・国際協力機構ガーナ事務所企画調査員で髪を洗うことがひとつの理由なのである。 くわえて、人毛製や合成繊維製のつけ毛もよく使われる。地毛に足して細かい三つ編みなどに結う「ラスタ」や、筋状に編みこんだ地毛に針と糸で縫いつける「ウィーブ・オン」などの方法がある。遠目には地毛のように見え、2週間から3ヶ月は洗う必要がない。つけ毛は色や形の種類が豊富で、地毛の長さに関係なく髪型を変えられるのも魅力だ。髪の装いに関する制限がさほど多くないキリスト教徒の女性では、特に人気が高い。ガーナの都市を初めて訪れた人は、女性の顔を覚えるのに苦労するかもしれない。なにしろ髪型がよく変わるのだ。カールにストレート、巻き髪、三つ編み、ポニーテール。髪が1日で急に長くなっていることまである。
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