FIELD PLUS No.9
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13Field+ 2013 01 no.9森林生態系学 今回のテーマは「変える」です。研究者は、研究対象とする地域・社会を「変える」力とどのように向き合っているのか、また、地域・社会とのかかわりの中で自らの調査研究をどのように「変える」のか、研究分野が異なる3人に自らの体験と経験の一端を紹介していただきました。 地域研究が専門の錦田愛子さんは、パレスチナ/イスラエルという紛争が絶えない地域とそこにかかわる人々が抱える諸問題について、フィールドワークを通じて検討・考察してきました。紛争地域ゆえの制約もあるなかでフィールドワークを重ねる錦田さんは、自らの研究の軌跡を振り返りながら、現地での調査から得られた体験と知見を生かし、研究の視点と課題を変えていく柔軟性の大切さを説きます。 同じく地域研究を専門とする日下部尚徳さんは、バングラデシュの農村社会が抱える貧困問題にマイクロクレジットの手法を用いて立ち向かう援助団体の試みを取り上げます。社会改革の強力な「ツール」とされるマイクロクレジットがその力を発揮するためには、援助する側が地域社会とそこに暮らす人々の生活を深く理解し、彼らと信頼関係を構築することから始める必要があると指摘します。 最後に、森林生態系学が専門の石田健さんから、コゲラなどの野鳥や野生動物の生態研究にまつわる、さまざまな「変える」話題を提供していだきます。自らの五感だけではなく、時代とともに進化する最新の技術や機器を駆使して自然環境と向かい合ってきた石田さんは、東日本大震災後調査に入った阿武隈山地での体験から、日本各地で人と自然との関係に大きな変化が起こりつつあるのではと気付きます。 3者3様のエッセイから、フィールドワークがそれに従事する研究者を「変える」力を感じていただけるのではないでしょうか。〈太田信宏 記〉

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