FIELD PLUS No.7
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32 32Field+ 2011 07 no.6麻生玲子(あそう れいこ)1981年生/日本学術振興会特別研究員(AA研)/記述言語学、琉球諸語(波照間方言)主要著作:“Hateruma, Yaeyama Ryukyuan”(Michinori Shimoji and Thomas Pellard(eds.), An Introduction to Ryukyuan Languages, Research Institute for Languages and Cultures of Asia and Africa, pp.198-227, 2010)●ひとこと:沖縄でフィールドワークを行っているのに、実は暑さが大の苦手です。調査に出かけることが多いのは11月から4月の間ですが、それでも十分暖かく、海で泳げる日も。フィールドワークの成果として、波照間方言の文法書を執筆することが当面の課題です。大塚行誠(おおつか こうせい)1981年生/AA研研究機関研究員/言語学主要著作:「ティディム・チン語における方向接頭辞óŋ-」(『東京大学言語学論集』第28号、197-218頁、2009年)●ひとこと:多様な言語と文化を持つチン族に魅せられてティディム・チン語を習い始め、はや5年が経ちました。チン族の言語は50種類以上もあります。チン族全体のことを知るにはまだ長く険しい(?)修行の道が続きそうです。小川 康(おがわ やすし)1970年生/チベット医学中央委員会/チベット医学主要著作:『僕は日本でたったひとりのチベット医になった――ヒマラヤの薬草が教えてくれたこと』(径書房、2011年)●ひとこと:千年以上も変わらないチベット医学を学ぶ過程の中で、医学生たちは劇的な変化を遂げて行きます。丸薬や施術、理論ばかりが注目されがちですが、チベット医学の教育システムを日本の医学教育に活かせないかと考えています。今後、医薬学部の教壇に立つことを目指しつつ、チベット医学教典『四部医典』の翻訳を完成させたいと思っています。小副川 琢(おそえがわ たく)1972年生/AA研特任研究員/政治学(特に国際関係論、比較政治学)、レバノン・シリア地域研究主要著作:「イスラエルによるレバノン攻撃とその影響――国内・地域的な視点から」(黒木英充編『「対テロ戦争」の時代の平和構築――過去からの視点、未来への展望』東信堂、129-145頁、2008年)●ひとこと:これまで、国際関係論の視点から現代のレバノン・シリア関係を研究してきました。今後は、地中海地域政治の一側面としての、両国の欧州、並びにマグリブ諸国との関係についても取り組みたいと考えています。梶丸 岳(かじまる がく)1980年生/日本学術振興会特別研究員(国立民族学博物館)、AA研ジュニア・フェロー/文化人類学主要著作:「歌掛けを見る/聞く――前観光的芸能としての中国貴州省山歌」(『人文学報』第99号、61-77頁、2010年)●ひとこと:歌の掛け合いを研究しています」と言うと、「そんなおじいちゃんの趣味みたいな!」とたまに言われます。「でもちゃんと学問的にも人間的にも研究する価値のあるものなんですよ!」と小声で言いたい。金谷美和(かねたに みわ)1969年生/京都大学地球環境学堂三才学林研究員、国立民族学博物館外来研究員/文化人類学主要著作:『布がつくる社会関係――インド絞り染め布とムスリム職人の民族誌』(思文閣出版、2007年)●ひとこと:最近はインドで更紗という染色技法に携わる人々の調査をしています。2001年のインド西部地震で大きな被害を受けた後、復興の際に古い道具がずいぶんと破棄されていることが分かりました。せめて残っているものの記録はしたいと思っています。児島康宏(こじま やすひろ)1976年生/AA研特任研究員/言語学主要著作:『ニューエクスプレス・グルジア語』(白水社、2011年)●ひとこと:最近になって、2000人くらいしかいないバツビ語の話し手のあいだに、方言のような違いがあることが分かってきました。また、約60年前の記録と較べると、グルジア語の強い影響を受けてさまざまな変化が起きていることも興味を惹きます。澤井一彰(さわい かずあき)1976年生/日本学術振興会特別研究員(東洋文庫)、AA研共同研究員/オスマン朝社会経済史、環境史主要著作:「気候変動とオスマン朝――『小氷期』における気候の寒冷化を中心に」(水島司編『環境と歴史学』勉誠出版、143-153頁、2010年)●ひとこと:最近は飲酒の歴史に関心があります。イスタンブル滞在中、日の高いうちは文書館にこもって作業しますが、日が沈むと「フィールドワーク」に繰り出します。もちろん、そちらの方が楽しいのは言うまでもありません。篠原正典(しのはら まさのり)1969年生/帝京科学大学/動物行動学、行動生態学主要著作:『遺伝子の窓から見た動物たち――フィールドと実験室をつないで』(共著、京都大学出版会、2006年)●ひとこと:鯨類という私たちヒトとは大きく異なる動物の立ち位置に歩み寄ることで、そこからのいままでとは違う眺望を少しずつ見つけ、楽しみ、研究を続けている。今は「生命の誕生→ヒトの誕生?」が悩み。 髙松洋一(たかまつ よういち)1964年生/AA研/オスマン朝史、古文書学、アーカイブズ学主要著作:「オスマン朝のハットゥ・ヒュマーユーンについての一考察――切り取られたハットゥ・ヒュマーユーンの検討を中心に」(『東洋文化』第91号、101-145頁、2011年)●ひとこと:現存しているオスマン朝の文書の用紙は、たいてい折り目がついています。最近、この紙の折り方に、実はそれぞれ意味があったのではないかと考えています。実物に触ることができるうちに研究を進められたらと思っています。辻 笑子(つじ えみこ)1982年生/東京大学大学院人文社会系研究科附属次世代人文学開発センター萌芽部門次世代人文学育成プログラム客員研究員/記述言語学、オセアニア言語主要著作:Midori Osumi and Emiko Tsuji,“Morphosemantic Features of Tinrin and Neku Verbs and Event-Classifying Verbal Prexes”(『東京大学言語学論集』第28号、173-195頁、2009年)●ひとこと:言語を学ぶ楽しさや、言語を通して異国の人と通じ合える喜びを、自分のフィールド経験を基にたくさんの人に伝えていくのが夢です。そして、ニューカレドニアの先住民語の保存にこれからも貢献し続けたいです。中山俊秀(なかやま としひで)1963年生/AA研/記述言語学、北米先住民の言語、言語使用と文法構造の関係主要著作:Nuuchahnulth(Nookta)Morphosyntax (University of California Press, 2001)●ひとこと:フィールドワークを通した言語研究を進める中で言語への見方が大きく変わってきました。従来の言語学のアプローチにとらわれずに、言語を、人々が生きていく営みの一つとして、使われる中で変化し続ける複雑でダイナミックな体系として、捉えるということにこだわって研究を続けています。古澤拓郎(ふるさわ たくろう)1977年生/京都大学、Fieldnet運営委員、AA研共同研究員/人類生態学主要著作:Furusawa T., Naka I., Yamauchi T., Natsuhara K., Kimura R., Nakazawa M., Ishida T., Nishida N., Eddie R., Ohtsuka R., Ohashi J.,“The serum leptin level and body mass index in Melanesian and Micronesian Solomon Islanders: Focus on genetic factors and urbanization”.(American Journal of Human Biology 23(4), 435-576, 2011)●ひとこと:GPS・GISの本を編集しましたが、フィールドワークで一番大切なのは、やはり(機械ばかり頼らずに)足を使ってデータを取ることだと思います。宮内泰介(みやうち たいすけ)1961年生/北海道大学/環境社会学、開発社会学主要著作:『開発と生活戦略の民族誌』(新曜社、2011年)●ひとこと:フィールドワークという営みの楽しさと創造性を、うまくまちづくりや市民活動に生かしたいと思う日々です。住民参加型の聞き書き・聞き取り調査の可能性を追求します。村尾るみこ(むらお るみこ)1977年生/AA研研究機関研究員/地域研究、生態人類学主要著作:「ザンビア西部、カラハリ・ウッドランドにおけるキャッサバ栽培――砂土に生きる移住民の対応から」(『アフリカ研究』第69号、31-43頁、2006年)●ひとこと:これから、ますます多分野の研究者の方と新しい研究テーマに取り組んでいきたいです。またザンビア、アンゴラをはじめアフリカ各地でのフィールドワークも意欲的にすすめたいと思っています。吉村貴之(よしむら たかゆき)1969年生/AA研ジュニア・フェロー/アルメニア近現代史主要著作:『アルメニア近現代史』(東洋書店、2009年)●ひとこと:アルメニアの「本国」と在外同胞との関係を通して、民族のアイデンティティとは何かを考察中。PROFILE■巻頭特集「人の営みの中でことばを捉える」補遺記事をご覧になって興味を持たれた方に、おすすめの図書を紹介します。『消滅する言語』デイヴィッド・クリスタル著、斉藤兆史/三谷裕美訳、中公新書、2004年。『少数言語をめぐる10の旅──フィールドワークの最前線から』大角翠編著、三省堂、2003年。『言語の興亡』R.M.W.ディクソン著、大角翠訳、岩波新書、2001年。

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