FIELD PLUS No.7
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28Field+ 2012 01 no.7特別企画JaCMESへようこそ! 小副川 琢 おそえがわ たく / AA研特任研究員ベイルート中心部に位置するJaCMESではレバノン政治の息吹が感じられます。周辺にある「殉教者広場」や「ハリーリー廟」、カフェ「エトワール」、「リヤード・スルフ広場」といったスポットを、政治状況と絡めて紹介しましょう。います。2001年に初めてレバノンを訪問して以来、数多くの方々と様々な場所で会ってきましたが、最近になって知り合った英国や米国、ドイツ出身の若手研究者たちとは、意見交換をする際にJaCMESに来てもらい、当オフィスを紹介しています。レバノンの旧宗主国であるフランスや、ドイツや米国といった国々もベイルートに研究拠点を有し、それぞれが高いプレゼンスを持っていますから、レバノンの研究コミュニティにおけるJaCMESの存在価値を高める活動も、自らの研究と並行して取り組んでいます。 話がやや逸れてしまいましたが、文献資料と意見交換以外の研究手法としては、JaCMES周辺に存在する「政治的な場」に出向くことで、レバノン政治を「肌で感じる」ことを心がけています。ということで今回は、首相府や国会議事堂といった「当たり前」な場所以外のスポットを紹介してみましょう。殉教者広場 最初に取り上げる場所は、ベイルート市の中心的空間である「殉教者広場」です。レバノン内戦中(1975~1990年)に、「キリスト教徒地区」といわれた東ベイルートJaCMESとは 「中東研究日本センター」(The Japan Center for Middle Eastern Studies 略称JaCMES)は、AA研初の海外研究拠点として、国際的な共同利用研究施設として機能することを使命としており、私は2010年11月から特任研究員として常駐しています。JaCMESのオフィスは、そのホームページ(http://meis2.aacore.jp/base_beirut)にも記載されているように、レバノンの首都ベイルートにおける中心部、通称「ダウンタウン」に位置しています。ダウンタウンというと、周辺に繁華街があるような印象を与えるかもしれませんが、確かにレストランやカフェなどが並んでいる街路も存在して、それなりに賑わいを見せてはいるものの、ベイルートの代表的な繁華街であるアシュラフィーエやハムラーほどではなく、むしろ「政治的な中心地」といったところです。というのも、JaCMES周辺には首相府や国会議事堂が至近距離に存在しているからで、閣議開催中や国会会期中に交通規制がしばしば行われるのを、オフィスの窓から観察することも可能です。 さて、JaCMESは2006年2月の設立以来、レバノンや日本などに関する様々な講演会や研究会を催し、研究成果をレバノン社会に還元してきました。また、「ベイルート若手報告会」という名称の下に、日本人の若手中東研究者に当オフィスで研究発表をしてもらい、それに対してレバノンや他の中東諸国在住の研究者からコメントをもらう、といったことも行っています。更に、レバノンや中東に関する蔵書も徐々に増やしてきており、資料利用での来所も想定しています。以上のことから、JaCMESは中東研究者同士のネットワーク構築における、結節点としての機能を果たしているといえるでしょう。研究生活 それでは、JaCMESを拠点にして、普段の私がどのような研究活動を行っているかというと、研究テーマはレバノンを中心とする現代中東の国際関係となりますが、その関連でレバノン内政にも関心を寄せています。というのも、レバノンに存在する主要政治組織の多くが、サウジアラビアやシリア、イランといった中東の地域大国(時と場合によっては域外大国や超大国とも)と密接な関係を有しているので、レバノンの政治過程はこれら大国の思惑や、それら諸国同士の関係が織りなす中東域内情勢の影響を受けやすいため、レバノン内政の観察を通して中東の国際関係を把握することが出来るからです。 このようなテーマで研究を進める上では、JaCMES所蔵の文献資料を使うことは勿論ですが、レバノンや中東域内政治に関する研究者、更にはレバノン人政治家やジャーナリストらとの意見交換も重視してシリアイスラエルベイルートレバノン「殉教者広場」全景。ベイルートでレバノン政治の息吹を感じる

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