フィールドプラス no.6
4/34

AfriField+ 2011 07 no.6 2010年度から始まったAA研の基幹研究「アフリカ文化研究に基づく多元的世界像の探求」は、所員のかかわる共同研究、科研プロジェクトなどを横断的に束ね、アフリカ研究の新しい方向性を切り拓こうとしている。その一つの重点的な領域としてジェンダー研究があり、本特集はこの基幹研究の一環として組まれた。2巻頭特集責任編集 永原陽子挿絵 富永智津子 読者が思い浮かべるアフリカ女性の姿とはどんなものだろうか。ノーベル平和賞を受賞し「Mottainai」運動で日本でも有名になったワンガリ・マータイさんのような、目を見張るばかりの行動力で世界をリードする女性? それとも旧習に苦しめられながら黙々と日々を生き抜く女性たち? はたまた昼間から呑んだくれる男たちを尻目に畑仕事に精を出し、自分の子供も他人の子供も一手に引き受けて育てる働き者の肝っ玉母さん? それぞれに一面の真実が含まれているであろう様々なアフリカ女性像のどこに彼女らの「素顔」を見るかは、当然のことながら、見る者とその人々との関係性に左右される。本特集の著者たちは、長年にわたってアフリカ各地のフィールドで研究し、活動しながら、多くの男女とかかわってきた。共通するのは、「中立・中性」を標榜する従来のアフリカ研究が、社会を支配する男性たちの視点に知らぬうちに拘束され、多くのことを見落としてきたことへの批判と反省であり、「見る自分」と「見られるアフリカ女性」という関係を超えて、自分自身の生き方や研究の姿勢を問い直し、それをぶつけながらアフリカの人々と関係を積み重ねてきた経験である。 読者には、内戦や鉱山への移民労働のような男性の専売特許と思われがちな事象を見つめることから浮かびあがる女性たちの生活や、さりげない日常の中で忘れがたい印象を与える女性たちの姿から見えてくる歴史の重みを、4つのエッセイから汲み取っていただきたい。文章や写真やスケッチを通じて、著者たちがアフリカ女性の姿を日本の読者たちに伝えようとすることもまた、アフリカ女性との交渉の一部である。素顔のアフリカ女

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る