フィールドプラス no.6
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■巻頭特集「素顔のアフリカ女性たち」補遺記事をご覧になって興味を持たれた方に、おすすめの図書・ウェブサイトを紹介します。◎図書◎『新しいアフリカ史像を求めて――女性・ジェンダー・フェミニズム』富永智津子・永原陽子編、御茶ノ水書房、2006年。『アフリカの女性史――ケニア独立闘争とキクユ社会』コーラ・アン・プレスリー著、富永智津子訳、未來社、1999年。『アフリカ史再考――女性・ジェンダーの視点から』アイリス・バーガー著、富永智津子訳、未来社、2004年。『結婚と死をめぐる女の民族誌――ケニア・ルオ社会の寡婦が男を選ぶとき』椎野若菜著、世界思想社、2008年。『アフリカ女性の民族誌』和田正平編、明石書店、1996年。◎ウェブサイト◎今号の巻頭特集は、AA研基幹研究「アフリカ文化研究に基づく多元的世界像の探求」の一環として組まれたものです。本基幹研究では、アフリカ女性に関わる企画も随時実施しています。詳しくは下記ウェブサイトをご覧ください。http://aaafrica.aacore.jp/●ひとこと:山岳氷河からアイスコアを採取して古環境を復元する研究をしています。アイスコアから見つかった気候イベントが、実はグリーンランドエスキモーの伝承で語り継がれていた出来事だった、みたいな発見をしたいと、夢想しています。3232網中昭世(あみなか あきよ)1976年生/日本学術振興会特別研究員(AA研)、AA研共同研究員/南部アフリカ史、地域研究(モザンビーク)、国際関係論主要著作:「モザンビーク南部の移民送り出しとその社会的影響の地域的多様性――植民地期のアルコール市場をめぐる競合と排除」(『アフリカ研究』第76号、1-15頁、2010年)●ひとこと:経済にまつわる分析をする際、しばしば目の前の数字だけを追いかけてしまいます。国際経済、世界経済史となるとなおさら人間の営みとしての経済活動であることを忘れがちです。フィールド・ワークを重ねた後、同じ統計資料の無味乾燥な数字の向こう側に以前は感知できなかった人の息づかいが感じられるようになりました。海老原志穂(えびはら しほ)1979年生/日本学術振興会特別研究員(AA研)/記述言語学、チベット語主要著作:『アムド・チベット語の発音と会話』(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2010年)●ひとこと:これまで、東北チベットで話されるアムド・チベット語の研究を主に行ってきました。今後は、パキスタンや北インドで話される西部のチベット語も視野にいれつつチベット語に挑んでいきたいと思っています。小田マサノリ(おだ まさのり)1966年生/AA研特任研究員/文化人類学、現代美術、メディア・アクティヴィズム研究主要著作:「J25ヴィデオ・ムーヴィー・ログ」(『現代思想 』4月臨時増刊号(総特集=アラブ革命、第39巻第4号)、368-377頁、2011年)●ひとこと:メディア・アクティヴィスト人類学者として行った最近の展示をご紹介します。「イルコモンズ監修「アトミックラウンジ」アーカイヴ+デモ展示:夢の原子力エネルギーから、悪夢の原発事故までの半世紀」門脇誠二(かどわき せいじ)1975年生/名古屋大学博物館/先史考古学主要著作:「北ヨルダン、タバカト・アル=ブーマ遺跡における後期新石器集落の構造:建築物と場の利用パターンに基づく世帯間関係の考察」(『オリエント』第52巻第1号、27-62頁、2009年)●ひとこと:気候変動や地域ごとに異なる環境に対応して、人々が社会の成員としてどのように生活を変化させたのかを考古学的に調べることによって、人類社会の共通性と多様性そして柔軟性をうかがい知ることを目指しています。児倉徳和(こぐら のりかず)1978年生/日本学術振興会特別研究員(九州大学)/シベ語(満洲=ツングース諸語)主要著作:「シベ語(満洲語口語)」(山越康裕・中山俊秀編『文法を描く2――フィールドワークに基づく諸言語の文法スケッチ』東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、131-157頁、2007年)●ひとこと:シベの人々はシベ語の他にも中国語やウイグル語などいくつもの言語を使いこなすのですが、彼らの話す言語が他の人々の話す言語と比べてどのような特徴があるのか、言語同士で相互に影響があるのかどうか、という点に関心があります。古谷伸子(こや のぶこ) 1978年生/AA研研究機関研究員/文化人類学主要著作:「薬が媒介する関係性――北タイの民間治療師とクライアントをつなぐ薬」(西井凉子編『時間の人類学――情動・自然・社会空間』世界思想社、182-203頁、2011年)●ひとこと:グローバル化のなかで民間医療の商品化がすすみ、チェンマイの治療師たちもその流れに取り込まれてきています。治療師の実践において、商売と「医の心」はどう共存するのか、このことに関心があります。陳 麗 君(ちん れいくん/タン レイクン)1971年生/国立成功大学(台湾)、AA研外国人研究員/社会言語学、談話分析主要著作:「台灣南島語族ê鄒族語言使用kap語言能力」(『台語研究』2巻1号、 4-27頁、2010年)●ひとこと:これまで、マイノリティーの言語の存続と社会の権力構造との関わりに関心を持っており、社会言語学的な調査をしてきました。今後の研究の方向としては、1.台湾語の統語と語用談話機能に関する基礎研究、2.母語伝承が困難である多言語・文化社会において、バイリンガル教育をどのように実践して行くべきかという第二言語習得についての社会言語学的研究、の2方向で進めて行きたいと考えています。富永智津子(とみなが ちづこ)1942年生/宮城学院女子大学キリスト教文化研究所客員研究員、AA研共同研究員/東アフリカ女性史主要著作:『ザンジバルの笛――東アフリカ・スワヒリ世界の歴史と文化』(未來社、2001年)●ひとこと:日本のアフリカ研究の中で、もっとも遅れをとっている女性史・ジェンダー史の重要性を示せるような論文・著作を書ければと思っている。ひとえに、若い研究者がこの領域に目を向けてくれることを願って……。永原陽子(ながはら ようこ)1955年生/AA研/南部アフリカ史主要著作:『「植民地責任」論――脱植民地化の比較史』(編著、青木書店、2009年)●ひとこと:女性を見なくては世界の半分、ではなく、半分以上が見えない、という思いは、アフリカとの付き合いが長くなるにつれ深まってきた。いまのアフリカを見る上でも、歴史史料の行間を読む上でも。 眞城百華(まき ももか)1974年生/津田塾大学国際関係研究所研究員、AA研共同研究員/エチオピア近現代史、アフリカ研究、国際関係学主要著作:「エチオピアの民衆反乱に対するイギリス軍の空爆」(『季刊戦争責任研究』第63号、20-28頁、2009年)●ひとこと:歴史研究のために入ったフィールドでは現代のエチオピアが抱える諸問題にも直面することになりました。フィールドでであった真実から目を背けず研究を続けていこうと思います。的場澄人(まとば すみと)1970年生/北海道大学低温科学研究所、AA研フィールドネット運営委員/雪氷学、地球化学主要著作: Sumito Matoba, Takayuki Shiraiwa, Akane Tsushima, Hirotaka Sasaki, Yaroslav D. Muravyev: “Records of sea-ice extent and air temperature at the Sea of Okhotsk from an ice core of Mount Ichinsky, Kamchatka”(Annals of Glaciology, 52(58), 44-50, 2011)三尾裕子(みお ゆうこ)1960年生/AA研/文化人類学主要著作:『台湾における〈日本認識〉』(編著、風響社、2011年刊行予定)●ひとこと:台湾において、〈日本〉は「経験」から「伝承」の世界に入りつつあります。現在は、「経験」者の証言を少しでも残したいと思い、焦る毎日です。宮本真二(みやもと しんじ)1971年生/滋賀県立琵琶湖博物館、AA研共同研究員/地理学、環境考古学、環境史主要著作:『鯰――イメージとその素顔』(前畑正善と共編著、八坂書房、2008年)●ひとこと:多様な分野の方と、多様な場所で調査していると、刺激を受けすぎて「自分って、何者?」状態。でも、多様な刺激をもとに「自然と人間との関係性」について、「地を這うフィールドワーク」で考えたいと妄想中。知力はないので、体力で。林 清 財(りん せいざい/リム チンツァィ)1957年生/国立台東大学(台湾)/民族音楽学主要著作: 「高雄地區平埔族風災與其文化傳承危機」(簡文敏主編『重建南臺平埔族群文化學術研討會論文集』台北、國立台灣博物館、155-172頁、2009年)●ひとこと:浅井恵倫先生の残した台湾先住民族の言語や歌謡についての録音、動画、ノートは、戦後初期の学者、そして私が80年代から集め始めた資料と通時的に比較することで、変化の過程がわかるという意味で、重要です。また、今や消滅の危機に瀕した彼らの文化の保存にとって、かけがえのない資料です。若杉なおみ(わかすぎ なおみ)1947年生/筑波大学大学院/小児科学、感染症免疫学、国際保健主要著作:「『人間の安全保障』とアフリカのエイズ」(『アフリカ研究』 第71号、73-84頁、2007年)●ひとこと:最近は、かつてあれほどよく一人でもでかけていたアフリカに行く機会が減った。体力も落ちてきたしちょうどよいのかな、とも思っていたのだが、何気ない時にふーっとアフリカの空気、色、匂いなどが私に湧き上がる。頭でっかちな脳人間として生きるのではなく、生身の生きものとして感じたり考えたり、を大切にしたい。Field+ 2011 07 no.6 PROFILE

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