〈星泉 記〉13Field+ 2011 07 no.6 人間が生活の舞台として自然環境をいかに活用してきたかを探る環境考古学。文字の記録も遺物も残されていない地域をフィールドとする宮本真二さんは、地中に埋もれた堆積物の層に着目します。削り、掘り出した堆積物を丹念に分析することで、人々の土地への働きかけの痕跡を読み取り、民族の移動や土地の開発といった人類史の一端を描き出していきます。こうした大きなテーマに挑むためには他分野へと開かれた研究スタイルが重要と強調します。 氷河をフィールドとする雪氷学の的場澄人さんは、氷河を掘削して氷の層を取り出し、そこに刻み込まれた環境変化の歴史を読み解く研究をしています。氷河上にテントを張って生活をしながら掘削や解析を行なう様子はいかにも過酷に見えますが、壮大な自然現象を自らの目で見て感じ、仲間とともに研究することの喜びは何ものにも代え難いもので、それこそが研究の原動力となっていることが伝わってきます。 西アジア地域の先史考古学を専門とする門脇誠二さんは、発掘とは、遺物が埋もれている状況やコンテクストを手掛かりに、過去の生活や社会の変遷に関する証拠を獲得する探索の場だといいます。フィールドでは、遺物を掘り出すだけではなく、土壌サンプリングや、遺跡の分布踏査など、様々な手法を組み合わせて研究を行なうことが重要です。そうして得られた複数種類の証拠をもとに、より確かな歴史を描き出すことができるのです。 それでは、3人の研究者の皆さんに、フィールドでの挑戦の様子やフィールドワークの魅力について語っていただきましょう。先史考古学
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