●巻頭特集「旅するインド系文字」補遺記事を読んで興味をもたれた方に、おすすめの図書・ウェブサイトを紹介します。Field+ 2011 01 no.5..3232石森大知(いしもり だいち)1975年生/AA研研究機関研究員/文化人類学、太平洋地域研究主要著作:『生ける神の創造力――ソロモン諸島クリスチャン・フェローシップ教会の民族誌』(世界思想社、2011年2月刊行予定)●ひとこと:自らの人類学的研究と、自然科学系の方々との共同研究。2つの研究の相違にとまどうことはしばしばですが、より望ましい関係を思案中。フィールドからの構想を大事にし、自分の中で2つの研究の融合を目指したいと思います。伊藤詞子(いとう のりこ)1971年生/京都大学野生動物研究センター、AA研共同研究員/人類学・霊長類学主要著作:「まとまることのメカニズム」(西田正規・北村光二・山極寿一編『人間性の起源と進化』昭和堂、233-262頁、2003年)●ひとこと:いま最も関心があるのは、動物が相互行為の中でどのようにオトナ/コドモ、オス/メス、といった関係を構築しているのかということです。人と動物でも同様の関係構築について調査続行中です。今堀恵美(いまほり えみ)1974年生/AA研ジュニアフェロー/社会人類学主要著作:「持参財を飾る刺繍、販売する刺繍――ウズベキスタン・ショーフィルコーン地区のカシュタ制作を事例に」(高倉浩樹・佐々木史郎編『ポスト社会主義人類学の射程』国立民族学博物館調査報告78、451-480頁、2008年)●ひとこと:私は工芸品について研究をしていても、工芸品を多数蒐集するコレクターではありません。むしろ印象的な一つの「もの」との出会いを通じて、その「もの」が背景にもつ履歴に関心を寄せるのが楽しみなのです。澤田英夫(さわだ ひでお)1963年生/AA研/言語学、文字研究 主要著作:『東南アジアのインド古典語碑文選――チャム文字・モン=ビルマ文字編』(高島淳と共編著、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2006年)●ひとこと:ある言語が別の言語を表す文字を受容した際、もとの言語の音から切り離して文字だけ借りたとは考えにくい。自言語への適応は、もとの言語の音のしくみに照らして行われたはずなのだ。本文で言い忘れたので、ここで。鈴木英明(すずき ひであき)1978年生/日本学術振興会特別研究員(東洋文庫)、AA研共同研究員/インド洋海域史主要著作:「インド洋西海域と『近代』――奴隷の流通を事例にして」(『史学雑誌』第116編第7号、1-33頁、2007年)●ひとこと:インド洋西海域世界とか世界史とか大きな話になると、なかなか人の顔が見えなくなります。そうした大きな枠組みを語るなかでどのようにしてそこに生きた人々の姿をリアルに表現するか、そのようなことを今、考えています。高島 淳(たかしま じゅん) 1955年生/AA研/宗教学 主要著作:“Pratisthā in the´Saiva Āgamas”(ed. Shingo Einoo and Jun Takashima, From Material to Deity: Indian Rituals of Consecration, Manohar, 115-142, 2005)●ひとこと:南タイ、マレーシア、カリマンタン島などまだまだ碑文の現地に立ったことのない場所は多い。実はパレンバンにも行っていない。拓本などだけでは見えてこないものが現地に立つと見えてくることはしばしばあるのだ。津田浩司(つだ こうじ)1976年生/AA研/文化人類学主要著書:『「華人性」の民族誌――体制転換期インドネシアの地方都市のフィールドから』(世界思想社、2011年刊行予定)●ひとこと:政治・社会・文化を取り巻く状況が大きく変動する中、それら変化が人々の日常と具体的にどのように繋がるのか。ゆっくりと時間の流れるジャワで他愛のない会話をしつつ、今後も調査を楽しんでいくつもりです。土金勇樹(つちかね ゆうき)1978年生/日本女子大学理学部学術研究員/藻類学、進化生物学主要著作:Yuki Tsuchikane, Yume Kokubun and Hiroyuki Sekimoto, “Characterization and molecular cloning of conjugation-regulating sex pheromones in homothallic Closterium”( Plant and Cell Physiology, 59(9): 1515-1523, 2010)●ひとこと:40年前に採集されて以来報告が無いミカヅキモを採りに、ネパールに行きたいと考えています。これからもフィールドから集めてきたミカヅキモを使って実験をしていきます。◎図書◎『華麗なるインド系文字』町田和彦編、白水社、2001年。『図説 アジア文字入門』(ふくろうの本/世界の文化)東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所編、 河出書房新社、2005年。『図説 世界の文字とことば』(ふくろうの本/世界の文化)町田和彦編、河出書房新社、2009年。『世界文字辞典』(言語学大辞典別巻)河野六郎編、三省堂、2001年。『世界の文字の図典 普及版』世界の文字研究会編、吉川弘文館、2009年。◎ウェブサイト◎「アジア文字曼陀羅〜インド系文字の旅」(2002年にAA研で開催した展覧会)http://www.aa.tufs.ac.jp/i-moji/ 永井正勝(ながい まさかつ)1970年生/筑波大学人文社会科学研究科準研究員/一般言語学、古代エジプト語学主要著作:『必携入門ヒエログリフ——基礎から学ぶ古代エジプト語』(アケト、2002年)●ひとこと:ある1つの対象を写真におさめようとしても、レンズの焦点距離に応じて対象の見え方が違ってしまいます。異文化理解も同じことでしょう。過去の人々の心のレンズはどのようなものであったのか、日々考えています。 町田和彦(まちだ かずひこ)1951年生/AA研/インド言語学、文字情報学 主要著作:Tej K. Bhatia and Kazuhiko Machida, The Oldest Grammar of Hindustānī: Contact, Communication and Colonial Legacy, (3 vols, Research Institute for Languages and Cultures of Asia and Africa, Tokyo University of Foreign Studies, 2008)●ひとこと:現在、ヒンディー語・日本語の電子辞書を作成中。同時に、20世紀初めの現代ヒンディー語散文の電子化とその公開の準備中。2つの作業は車の両輪のように進んでいる。つづりの誤りを自動的に検出することができる装置を、いつも夢想している。山田敦士(やまだ あつし)1976年生/日本学術振興会特別研究員(北海道大学)、AA研共同研究員/言語学主要著作:『スガンリの記憶――中国雲南省ワ族の口頭伝承』(雄山閣、2009年)●ひとこと:フィールドワークをしていると「去る者は日々に疎し」ということを強く感じます。何はなくとも時々は顔を見せる。お茶の一杯、タバコの相伴。これもフィールドワークの大切な一部分なのだと思います。横田祥子(よこた さちこ)1976年生/日本学術振興会特別研究員(東京外国語大学)、AA研共同研究員/社会人類学主要著作:「グローバル・ハイパーガミー?――台湾に嫁いだベトナム人女性の事例から」(『異文化コミュニケーション研究』第20号、79-110頁、2008年)●ひとこと:これまでの調査地・台湾を飛び出し、台湾へ嫁いできたインドネシア華人女性の故郷に行き始めました。二つの地域を行き来しながら、再生産労働の国際分業化が両地の結婚や家族にもたらしたものと、華人社会間の婚姻交換のユニークさについて考えています。 PROFILE
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