Field+ 2011 01 no.527ガダルカナル島のある村落の記念式典に参列した聖職者(ミニスター)に贈られた豚。都市のマーケットで販売されているビンロウの実。この実とキンマの葉、そして石灰を口に含んで咀嚼する。青年が描いたサイラス・エトの肖像画。たポリネシアの島々に比べて、メラネシアでは言語と文化が極めて多様であることが特徴です。【石川】 ソロモン諸島ではどのようなものを食べているのですか?【石森】 主食は、伝統的にはタロイモやヤムイモだったのですが、現在では外来のサツマイモやキャッサバです。おかずは、やはり周囲の海で釣った魚ですね。ヤシガニやワタリガニは激ウマです。そういえば先月、ガダルカナル島でムササビを食べました、これは稀にしかありつけません。豚は貴重な財産なのでおもに饗宴のときだけです。また都市部を中心に、購入食品であるコメ、缶詰、インスタント麺なども食されています。そのほか嗜好品として、ビンロウの実をかむ習慣があります。かんでいるとぼーっとしてくるので、人びとは「ソロモンのビールだ」と言っています。1を信徒とするなど相当の影響力をもっていました。また、ベツレヘム、ナザレ、エデンなど聖書に由来する村落名も興味をそそりました。そしてパラダイスとよばれる村がCFCの本拠地と知り、そこで調査を始めることに決めました。もちろんその前に「生ける神」に実際に面会し、お許しをもらったことはいうまでもありません。【石川】 CFCとはどのような宗教団体なのでしょうか?【石森】 CFCは、ニュージョージア島のサイラス・エトという人物が創始した新しい教会です。エトは、イギリス植民地時代に洗礼を受けた後、メソジスト教会のミッション・スクールで学びました。やがて彼は西洋人からも「祈りの人」と呼ばれるほど、熱心にキリスト教を信仰するようになりました。祈りに明け暮れる生活を送る中、彼は、「聖霊が体の中に入り込む」という神秘的な体験をし、また「人びとを新しい生活に導きなさい」という神の啓示を受けました。その後、彼は自分の出身地に帰って独自の方法で布教活動を展開するようになり、それがしだいにニュージョージア島で広がっていきました。メソジスト教会がこのような彼の活動に対する批判を強めたことから、エトはメソジスト教会との訣別を決意し、その結果1960年代にCFCが成立しました。【石川】 「人間を崇拝する」というのはどういうことでしょうか?【石森】 エト自身が述べたわけではありませんが、CFCではエトは「生ける神」と信じられ、彼の家族も「ホーリー・ファミリー」と呼ばれています。フィールドは「生ける神」の村【石川】 ソロモン諸島での調査についてお聞かせください。【石森】 ソロモン諸島は9つの州からなりますが、私が初めて調査したのはウェスタン州のヴァングヌ島です。この島では、おもに先ほどお話ししたソロモン諸島研究プロジェクトの共同調査を行いました。その中で、同州のニュージョージア島にクリスチャン・フェローシップ教会(CFC)という教会があり、生身の人間が「生ける神」として崇拝されていることを知りました。それだけでも驚きだったのですが、この教会は州人口の約3分の
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