24Field+ 2010 07 no.4大西健夫、中国三江平原でのフィールドワーク中。石森大知、ソロモン諸島にて、保健医療の調査中。 古澤拓郎、調査地のソロモン諸島にてカヌーを毎日漕ぐ。特別企画 フィールドワーカーのためのネットワークFieldnet仕掛人 椎野若菜(AA研) Fieldnetは国内外でフィールドワークを行う研究者が互いの知をむすび、また新たな知を構築するネットワークです。前半では、仕掛け人である椎野若菜がまず、その立ち上げから現在までの活動を紹介します。後半は、Fieldnetの運営にご協力いただいている構築委員のみなさんにFieldnetへの思いを語っていただいた、座談会の様子をお伝えします。 Fieldnetとは Fieldnetとは海外、国内でフィールドワークを行う研究者が、文系理系、専門分野や所属を越えて参加し、個々人のもつフィールド情報や研究上の情報などを提供しあい、互いの知をむすび、また新たな知を構築するネットワークです。またオンラインで得たつながりをオフラインでも研究に活用していくことをめざします。 たとえば、海外でフィールドワークを行っている研究者と話すとよく次のような悩みを打ち明けられます。・同じ国の、しかも同じような地域で活動してい る研究者がいるのに、お互い何をしているのか、 よくわからない。 ・日本に帰ってきてから、同じ地域で調査をして いた人がいることを知った! ・対象地域を変えて研究をする予定だが、初めて 関わる地域なので、どのような研究者がいるの か知りたい。 ・久しぶりにフィールドワークをするが、地域の 状況がよく変わるので、最近の情報を知りたい。 ・異なる分野の人と共同研究がしたいが、どのよ うな研究者がいるのかわからない。 このようなときに手がかりを得られるようなサイトがあれば便利ではないか、そこで出会った研究者が知的刺激を受けあい、その中からゆくゆくはフィールドという現場からから生まれる、分野を越えた共同研究ができればと思ってFieldnetの構築を始めました。 Fieldnetでの「フィールド」とは、人間、人間の作り出す文化、政治、経済、また動物、生物、自然環境、など研究対象に応じて調査のためにでかける世界のさまざまな土地のことを主にさしています。しかし翻って考えれば、広い意味では文献もフィールドであり、文献調査もフィールドワークであり、また家のなかもフィールドでありえます。フィールドとは、研究者の身の回りすべてであり、研究者はつねにフィールドワークをしているのだ、ともいえます。Fieldnetという場でこうした広義の「フィールド」をキーワードに、研究対象地域、研究分野を越えて、研究成果の知を共有していく。それが目標です。 Fieldnetは、自分の研究をアピールする場であり、世界中の地域情報を提供・発信、受信する場であり、自分の関心事をほかの研究者と共有して深めていくことができる、無限の可能性に満ちています。つながりたい者同士がともに構築していくウェブサイトなのです。 Fieldnetのはじまり~構築委員とともに~ 私がFieldnetを創ろうと思ったのは、所属しているAA研で毎年開催されている海外学術調査総括班フォーラムという催しの準備に携わったことでした。これは文部科学省の助成を受けて海外調査を行っている研究グループの代表者やその代理の人たちが、海外調査に関する情報を交換する催しです。参加者の専門分野はさまざまで、研究調査をしに行く先も、まさに世界中。ここで「全球」なる表現があることも知りました。私は、人類学の調査のためにケニアにばかり通っていますが、地球全体をフィールドにしている人もいるのだ!かっこいい。 でもこのような機会が1年に1回しかないのはもったいない。それにこの催しに参加する年輩の研究者だけではなく、次の時代の学問を活性化すべき若手研究者こそ研究上の情報を交換すべきでは?と思うようになりました。研究は1人でじっくり行うことがベースですが、1人では行き詰ってうまくいかないことも多い。共通の関心をもった人と議論して、新たな展開がみえたりすることって大事では? 直接自分の研究に反映しなくても、それぞれに頑張っている人と会う機会があるとなんともいい刺激をうけるし、フィールドワークをする者同士だったらなおさら共感することも多そう。自分の研究をアピールしつつ、たがいに情報交換したり、議論する場があったらいいなあと思ったのがFieldnetを創ろうと思ったきっかけです。社会人類学を専攻する大学院生だった私は、ケニアをフィールドとしたことで、ナイロビにある日本学術振興会ナイロビ研究連絡センターに集う生態人類学、霊長類学、地理学、考古学、教育学、昆虫学、農Fieldnetへようこそ! http://eldnet.aacore.jp
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