8* 記載のない写真は すべて筆者撮影。が多かった。タブレット端末を利用すれば、学校で推進が求められているICT機器の活用にもつながるので、この機会に初めてタブレット授業に取り組んだ先生も多く、講習会も多数開催された。授業中にタブレットで各自が音楽を聴いたり作曲アプリで曲を作ったりする様子は、演奏会やライブがすべて中止となり家の中で音楽を聴くしかない大人と似たところがあるかもしれない。楽科の教員が直面した課題であった。 筆者の担当授業の大半は講義科目だが、小学校の教員免許取得に必要な科目「小専音楽」ではピアノの実技を教えている。例年は教室に受講生が集まり、1人ずつ宿題の曲をピアノで弾く。教員は学生の演奏にアドバイスを行い、次の宿題の模範演奏と練習上の注意点を説明する。教室にはピアノがあり、受講生は大学の音楽棟の練習室のピアノを使って練習ができた。しかし遠隔授業では大学の楽器は使えない。家にピアノやキーボードがない人が数名、楽器はあるが「音出し禁止」でヘッドホンを外せないという人もいた。心配しながら授業準備を開始したが、最終的には、教室での授業とほぼ同じ流れで授業を行う方法が見つかった。宿題の説明動画を作成して配信し、受講生はそれを見て自宅で練習し、Zoom授業で宿題を弾くという流れである。Zoom授業は3人1組で15分ずつ、楽器が家にない人は紙■盤の上で手を動かしてもらった。ピアノの弾き方を動画で説明する時にも紙■盤を使用(「小専音楽」のための動画より)。宮城教育大学附属小学校「合唱の会」での1年生の演奏(2021年2月、提供:宮城教育大学附属小学校)。前後左右の距離を確保して二部制で実施。「民族音楽演習(ガムラン)」の授業風景(2021年9月)。インドネシアのガムランの集中講義。楽器も人も距離を確保しながら授業を行った。小塩さとみ おしお さとみ / 宮城教育大学、AA研共同研究員コロナウイルスの感染拡大は、学びの場である小中学校や高校・大学での音楽活動にも大きな影響を与えている。その実態はさまざまであるが、宮城県の教員養成大学で音楽学を教えている筆者の体験と、教え子の教員約20名にオンラインで実施したインタビューの聞き取り内容をもとに、教える側の■藤を報告する。「みんなで演奏」は危ないこと!? 2020年2月末に翌月からの小中学校一斉休業要請が発表されると学校の環境は一変した。卒業式や終業式は縮小あるいは中止となり、遅れて始まった新年度の授業は、道具の共有やグループ活動を避けて実施された。文部科学省からは「リスクの高い学習活動は行わない」よう指示があり、音楽の授業では、歌と■盤ハーモニカやリコーダーなど息を使う楽器の演奏が「高リスク」とみなされた。学校再開後もしばらくは音楽の授業を行わず、他の教科を優先した学校も多かった。通常ならば新年度の音楽の授業は歌から始まり、新入生は校歌を歌い覚えていく。みんなで歌うことは音楽の学習の基本であり、同時に一緒に学ぶ仲間との関係を作る行為でもあった。しかしコロナ状況下で、音楽は「危険な」「こわい」活動になってしまった。 地域や学校により状況は異なるが、2020年度の音楽の授業は、「音楽鑑賞」や「音楽づくり(創作)」を中心に行った学校オンラインでもできること・できないこと 大学も2020年度は大半が遠隔授業で始まった。筆者の勤務校では5月の連休明けにすべての授業を遠隔で実施する形で前期授業が始まった。講義科目は、担当教員が動画を作成して配信するか、ZoomやGoogle Meetなどインターネット会議システムを利用すれば、通常とほぼ同じ内容の授業を遠隔で行うことができる。しかし音楽実技を遠隔で教えることはできるのか。これは音楽大学や教員養成大学の音学びの場における音楽活動学びの場における音楽活動「密」をさける難しさをどう乗り越えるか「密」をさける難しさをどう乗り越えるか
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