フィールドプラス no.28
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2責任編集 菅原由美巻頭特集 東南アジアでは13世紀末頃からイスラーム化が始まった。それはゆっくりと長い時間をかけて、各地でそれ以前の文化と融合しながら進み、多様なイスラームが各地に誕生した。その多様性は、様々な文字や言葉で書かれた現地語写本にも表れている。 13世紀末、現在のインドネシア、アチェ州東海岸ロクスマウェ周辺に東南アジア最初のイスラーム王国であるサムドゥラ・パサイ王国が建国された。その後、15世紀にマラッカ海峡に拠点を置き、交易ネットワークの中心として最盛期を迎えたムラカ(マラッカ)王国が東南アジア海域世界にムラユ(マレー)語とともにイスラームを広める中心的役割を果たした。ムラユ語は7世紀頃より、南インド起源の文字によって記されてきたが、イスラームが広まるにつれ、アラビア文字で表記されるようになった。ジャウィと呼ばれたアラビア文字表記のムラユ語は東南アジア・イスラーム圏に広まり、スマトラ島からフィリピン南部にまで及ぶ共通のメディアとなった。一方で、東南アジア島嶼部には700を超える多現地語写本にみる東南

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