フィールドプラス no.28
30/32

●ひとこと:言語学に限らず、どんな分野においても、古典と化した書物に改めて向き合うと、古人の洞察力に改めて感動することがあります。パーニニなら、フンボルトなら、サピアなら、目の前のこの問題をどう考えるだろうかと思いをめぐらしていると、生きている言語学者よりも、昔の学者に強く惹かれている最近の自分に気づきます。これが年を取るということでしょうか?Javanese Documents OnlineJavanese Documents Online(略称JVDO)はジャワ語のテキストを収録したオンライン・コンコーダンスのサイトです。ジャワの文学、歴史、文化研究の資料となる、古ジャワ語とジャワ語で書かれた碑文、貝葉、写本など様々な文字資料を本サイトで利用することができます。現在、テキストの収録数を増やし、またより利用しやすい形にむけて改装中ですが、今年度中には新装開店できる予定です。https://jvdo.aa-ken.jp/index.htmlJavanese Studies Series古ジャワ語・ジャワ語資料研究Javanese Studies Seriesも現在 vol.6まで出版されています。AA研刊行物http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/publications/area-culture#southeastasiaJのB196[JS-1]~B334[JS-6]です。巻頭特集「現地語写本にみる東南アジアの イスラーム化」補遺巻頭特集に興味を持たれた方に、AA研のオンラインリソース、刊行物をご紹介します。相田 豊(あいだ ゆたか)1990年生/東京大学/文化人類学、ラテンアメリカ地域研究主要業績:「『孤独』から立ち上がる世界──存在論的個体発生論から見るボリビア・フォルクローレ音楽家の生」(『社会人類学年報』第47号、59-82頁、2021年)●ひとこと:ボリビアを旅する中でたくさんの珍しい植物に出会ったことをきっかけに、最近観葉植物の栽培にはまりはじめました。人間のことを理解するのも難しいですが、植物のことを理解するのも難しいです。小川絵美子(おがわ えみこ)1984年生/日本学術振興会特別研究員RPD(AA研)/文化人類学主要業績:「タイの占い──人々の願いに寄り添うもうひとつの信仰」(『盤谷日本人商工会議所所報』第702号、19-29頁、2020年)●ひとこと:シンポジウム、セミナー、研究会などがオンライン化しました。参加のハードルがさがったのは嬉しいことですが、参加登録をダブルブッキングしてしまったり、うっかり出席を忘れてしまったりということが増えました。川島 緑(かわしま みどり)1952年生/上智大学名誉教授/フィリピン近現代史主要業績:『マイノリティと国民国家──フィリピンのムスリム』(山川出版社、2012年)●ひとこと:フィリピンのムスリムの政治・宗教運動を研究しています。この研究の基礎資料となる南部フィリピン諸語、マレー語、アラビア語などの資料の収集・集成・研究にもフィリピン内外の研究者と協力して取り組んでいます。https://kawashimamidori.jp黒田景子(くろだ けいこ)1957年生/鹿児島大学共通教育センター名誉教授、AA研フェロー・共同研究員/歴史学、マレー半島のイスラームと仏教混住地域史主要業績:Siamese and Thai Buddhist Temples in Kedah: A Field Report of 2007-2009(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2021年)●ひとこと:タイ語とマレー語で集めた史料と、また村落での聞き取りで得たオーラルヒストリーを解析して地域の姿がわかってきました。現場を五感で知ることの大切さを改めて思います。この上はやはりアラビア語を習うべきか。後藤絵美(ごとう えみ)1975年生/AA研/近現代イスラーム、ジェンダー主要業績:『神のためにまとうヴェール――現代エジプトの女性とイスラーム』(中央公論新社、2014年)●ひとこと:フィールドからしばらく遠ざかっているあいだ、著述や伝記などを通して、20世紀エジプトの思想家や運動家の女性や男性との出会いを楽しんでいます。椎野若菜(しいの わかな)1972年生/AA研/社会人類学、東アフリカ民族誌主要業績:『結婚と死をめぐる女の民族誌――ケニア・ルオ社会の寡婦が男を選ぶとき』(世界思想社、2008年)●ひとこと:アフリカ社会と日本社会をアフリカ人と共に調査し、未来を考えたい。アンバランスな調査する/される側関係からの脱却をめざしたい。菅原由美(すがはら ゆみ)1969年生/大阪大学、AA研共同研究員/インドネシア史、東南アジア島嶼部イスラーム史主要業績:『オランダ植民地体制下ジャワにおける宗教運動──写本に見る19世紀インドネシアのイスラーム潮流』(大阪大学出版会、2013年)●ひとこと:歴史学者は現地調査ができなくても、研究に支障はないと思われがちですが、コロナのために2年以上インドネシアで調査を行うことができなかったことで、現地調査がどれほど自分の研究にとって必要であったかを再認識しました。田島知之(たじま ともゆき)1984年生/京都大学学際融合教育研究推進センター宇宙総合学研究ユニット特定助教、日本学術振興会海外特別研究員(ワシントン州立大学)/霊長類学、人類学主要業績:Reproductive success of two male morphs in a free-ranging population of Bornean orangutans(Primates, 59, 127-133, 2018)●ひとこと:オランウータンを対象に繁殖戦術や食物分配について研究してきました。2022年からはワシントン州立大学のボニー・ヒューレット博士と共同で、ヒトと類人猿の比較から青年期の進化史的起源について研究を行っています。峰岸真琴(みねぎし まこと)1956年生/東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所名誉教授、AA研フェロー/東南アジア言語学、言語類型論主要業績:『言語基礎論の構築に向けて』(編著、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2006年)※ 『言語基礎論の構築へ向けて』で書誌登録されていますが、本来の書名は奥付にある『言語基礎論の構築に向けて』です。吉本康子(よしもと やすこ)1972年生/京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科特任研究員、AA研共同研究員/ベトナム地域研究、文化人類学主要業績:“A Study of the Hồi giáo Religion in Vietnam: With a Reference to Islamic Religious Practices of Cham Bani”(Southeast Asian Studies, 1(3), 487-505, 2012)●ひとこと:ベトナム中部、南部の先住民チャムの宗教とエスニシティについて研究しています。主にフィールドでの参与観察とインタビューという方法で調査をしてきましたが、近年はチャム語の資料の解読にも取り組んでいます。章 舒娅(Zhang Shuya)1990年生/日本学術振興会外国人特別研究員、AA研フェロー/言語学、ギャロン語主要業績:Le rgyalrong situ de Brag-bar et sa contribution à la typologie de lʼexpression des relations spatiales : lʼorientation et le mouvement associé(白湾のギャロン語と、空間的関係の表現の類型論への貢献:方向と関連する移動)(INALCO PhD dissertation, 2020)●ひとこと:四土嘉戎(ギャロン)語の白湾方言に焦点を当ててフィールドワークをしています。この研究に加え、言語学的手法により、民族植物学、空間認知、親族用語、および伝統的なギャロン建築について、学際的に調査をしています。28Profile

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る