フィールドプラス no.28
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bə-tɕəp,茶rɴɢɯloʁ,绰qbətɕəp, zkó」、茶■■■■堡ギャロン語(北語支)で「ɕ■■kû」、西夏語(西語支)で   kdzəló」が北ギャロン語の「mɴɢɯloʁ」)が、绰斯甲語の有気音「qフィールドワークへの民族植物学調査の啓示 言語調査を通して、民族植物学に学術的根拠を与えるとともに、植物名を研究することは、言語調査にも多くの啓示を与えてくれる。調査中に、(言語学的には根拠のない)「民間語源(Folk etymology)」の問題に気づいた。伝統的な生活様式の崩壊に伴い、植物、特に野生植物は、利用率の低下によりギャロンの人々の生活から消え去り、人々の植物名の記憶はぼやけはじめている。例えば、四土ギャロン語での小藜の名前には、3つのバリエーションがある:rbətɕək。一部の話者は、zbətɕəkbətɕəp, z■■■■■ɕək つぼみ」に由来すると考えの-tɕəkは、四土ギャロン語の「ta-tており、植物の外観は確かにつぼみを彷彿とさせる。しかし、それを茶堡ギャロン語の同根語rmba-tɕɯβと比較することにより、四土ギャロン語の形は民間語源を受け入れた形である可能性が高いと推測できる。民間語源の問題は解決するのが簡単ではなく、四土ギャロン語の小藜は、それを特定できる数少ない幸運なケースだ。 祖形の反映形と民間語源は、共時態として同時に存在し、それらの交替は比較的時間が経ってから発生している。この例は、フィールド言語学者は言語資料の収集に際して常に注意を払う必要があることを示している。言語学的調査は再確認と修正を繰り返すプロセスでなければならない。完全に正しい記録はなく、完全に役に立たない資料はない。時には「一見不規則な」形式も利用できるのである。 ku」、绰歴史言語学と考古植物学 中には、共時的に分析できない植物名も多くある。それらが、祖語から受け継がれた古い単語である可能性が最も高い。例えば、ギャロン語群は、シナ・チベット祖語の「ネギ」の名を継承した。これは、同語族で最も古い単語の1つである。四土ギャロン語(東語支)で「ɕ■■クロスキャプ斯甲語(西語支)で「sju.1(西夏祖語 *S-kjo「ネギ、韭、蒜」に由来)であり、これらは漢語祖語の「skru2韭」、チベット語のsgog-pa「蒜」と共通の起源を持っている。この名称の古さから、ネギ属がこの地域で非常に早くから栽培されていたと、疑いなく説明できる。 実際には、「ネギ」のように語族内で明確に語形が対応している植物名は多くなく、ほとんどの植物名の対応はそれほど明確ではない。例えば、一部の植物名は、ギャロン語群の中で前鼻音化有声子音と無声有気子音の対応がある。イラクサについては、四土ギャロン語の「mtsʰalu」に対応し、クルミ(Juglans regia)⑥については、ギャロン主要語の有声子音(茶堡ギャロン語で「ʑ■■■■■■ʰêle」に対応する。これらの対応については現在完全に説明することはできないが、歴史言語学的には、「不規則な対応は古形を反映し、過去には規則的だった形態を再構する、重要な手がかりでありうる」と考えられる。そのため、「イラクサ」や「クルミ」などの不規則な対応を持つ植物名は、古くから存在しているものである可能性が高い。 それでは、原始ギャロン語の植物名を研究することの意義は何か? その1つは、この地域の考古学研究に、言語学的証拠を提供できることである。現在、原始ギャロン語に再構できるいくつかの植物名は、考古学者によって発見されたチベット高原の■■■■■■■■■■■初期の植物と部分的に一致することがわかっている。これらには「小藜」(四rbə-vé);「クルミ」(四ʑ■■■galó,茶ʑ■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■mba-tɕɯβ,绰l■■ʰêle)などが含まれる。雲南中医薬大学の楊叢衛先生は植物標本の圧搾を実演している。ツェワン氏(四土ギャロン語話者)は私にサカプチョという土地についての伝説を教えてくれた(撮影:頼雲帆)。27

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