フィールドプラス no.28
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フィールド ノート①イラクサ(撮影:楊叢衛)。④華蓼。川の近くにあるこの村で、四■■■■土ギャロン語の白湾方言を研究している。 村や田園地帯では、人々を「噛む」可能性のある野生植物イラクサ(Urtica)①に注意する必要がある。地元の人は「村があるところにはイラクサがある」と言う。この植物は至るところで育ち、目立たないが、非常に強く人を害する。イラクサの葉は細い棘でいっぱいで、誤って触れた場合、数日間赤みや腫れを引き起こすことがある。調査中、頼雲帆博士(ギャロン系言語の専門家)と私はイラクサに何度も刺された。しかし、イラクサに刺されても慌てる必要はない。どこにでもある中華山蓼(Oxyria sinensis Hemsl)②の樹液は、イラクサの痛みを効果的に和らげることができる。地元では「悪いイラクサは私を噛んだが、中華山蓼は私を保護した」とも言う。実際、役に立たない悪い植物はない。イラクサと中華山蓼は、ともに有用な植物である。中華山蓼は、地元の豚の良い飼料だ。食糧が不足しているときは、イラクサを牛に与えることができるし、人間もイラクサを食べることができる。イラクサの葉と小藜 (Chenopodium serotinum)③ を混ぜて、おかゆを作ったりもする。 このようにしながら、私たちは川の近くから山の真ん中まで移動し、登りながら植物を特定した。川近くの村から離れると、インフォーマント(話者)がはっきりと識別できる植物の数は徐々に減っていった。標本袋が満杯になったため、山を降りて調査結果を整理することにした。山のふもとで、収集した標本の植物情報と言語情報を比較した。言語学者の頼博士と私は植物の学名の複雑さを嘆き、同行する植物学者はギャロン語の植物名の意味に驚いていた。ではギャロン語の植物名から何が分かるのか? ②中華山蓼(撮影:楊叢衛)。⑤牛蒡(撮影:楊叢衛)。■■■■■■ ■■名詞の形態と民族植物学の知識 ギャロン語の植物名には、非常に複雑な名詞形態が含まれている。これらを正しく分析することで、植物名の背後にある秘密を明らかにすることができる。 多くの植物名は複合語で、植物の外観や成長の習慣などを説明する情報が含まれている。しかし、植物名は必ずしも直観的に植物の様態を反映しているわけではなく、特定の民族の植物に対する認識を暗示している。例えば、華蓼(Polygonum cathayanum A. J. Li)④は、四土ギャロン語の白湾方言で「kəɟók綿羊」の連結形「kəɟɐk-」と「-vó 腹、腸」で構成されており、そのままの意味は「羊の腸」。しかし、私がその植物を見た時、その物理的な形はすぐに羊の腸のイメージを思い起こさせなかった。インフォーマントの説明によると、「羊の腸」は華蓼の成長過程を反映しているという。華蓼は独自の根茎を持たないため、常に他の植物に付着して(羊の腸のように)伸びるのだ。 植物の「使用法の説明」に基づいた名称もある。例えば、牛■■■蒡(Arctium lappa) ⑤は、四土ギャロン語では 「pəɟə-rtsôs」と呼■■■■əɟû 鼠」の連結形「pəɟə-」と、動詞語幹「-rtsôs ばれ、名詞語幹「p触る」の複合語である。この語形は牛蒡の「植物トラップ」の機能を明らかにする。地元の人によれば、ギャロン地域では牛蒡を乾かした後、鼠が通りかかる場所に置く。鼠が牛蒡にくっついて、そこから逃げられないと、消耗して死ぬ。私は当初、牛蒡が鼠取りとして使用できることに懐疑的だったが、2021年夏、甘孜州丹■■巴■県莫■■洛村の民家で、ボイラーの上の棚に牛蒡の鼠取りがぶら下がっているのを見た。伝統的な植物学の豊富な知識に驚かざるをえない。əɟɐk-vó」と呼ばれる。これは、「k③小藜(撮影:楊叢衛)。⑥クルミ(撮影:楊叢衛)。■■■■■■■■■■ ■■■■26

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