*記載のない写真はすべて筆者撮影。24ギャロン地域の地形。民族植物学と言語記録 1895年、アメリカのJ. W. ハーシバーガー教授は、新しい学際的研究として「民族植物学(ethnobotany)」を提案し、特定の民族が植物をどのように利用するかについての科学的研究であると定義した。その語源は、民族学(ethnology)と植物学(botany)である。この研究法に関しては、フランス人のA. -G. オードリクール(1911-96)に言及する必要がある。彼が民族植物学に言語学の研究手法を導入したためだ。オードリクールは、言語資料を人と植物の関係を研究するための基礎資料とし、それにより民族植物学の研究に歴史的視点を与える、新しい研究方法を開拓した。 フィールドワーカーにとって、この研究法は、学際的研究における言語調査の基本的な役割について問い直すとともに、フィールド言語学に新しい課題を与えるものである。フィールド言語学者は、記述言語学の伝統を守り、言語記録の3つの側面―自然言語データの収集、辞書の編集、文法の記述―を完了する必要がある。同時に、言語記録は、言語自体に限定すべきでないことも認識されねばならない。さらに長い目で見ると、言語学者は言語が使用される環境、および言語の持つ文化と歴史についても研究しなければならない。フィールド ノート言語学者と植物嘉戎(ギャロン)語の民族植物学 Zhang Shuya / 日本学術振興会外国人特別研究員、AA研フェロー章 舒娅言語学者はその言語が使用される環境、文化や歴史も研究しなければならない。中国・四川省での植物語彙のフィールド調査について紹介する。
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