フィールドプラス no.27
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『負債論――貨幣と暴力の5000年』デヴィッド・グレーバー著、酒井隆史監訳、高祖岩三郎・佐々木夏子訳、以文社、2016年。『借りの哲学』ナタリー・サルトゥー=ラジュ著、高野 優監訳、小林重裕訳、太田出版、2014年。『〈借金人間〉製造工場――“負債”の政治経済学』マウリツィオ・ラッツァラート著、杉村昌昭訳、作品社、2012年。『社会人類学案内』エドマンド・リーチ著、長島信弘訳、岩波書店、1991年。巻頭特集「デット── 『負債/負目』研究の最前線」補遺記事をご覧になって興味を持たれた方に、おすすめの図書を紹介します。伊藤智ゆき(いとう ちゆき)1975年生/AA研/言語学(音韻論、歴史言語学)主要業績:“A Sociophonetic Study of the Ternary Laryngeal Contrast in Yanbian Korean”(『音声研究』第21巻第2号、80-105頁、2017年)●ひとこと:韓国朝鮮語を対象に、音韻論研究をしています。古代語再建・方言アクセント研究などマニアックなテーマが多いですが、自分が楽しいだけでなく、他の方にも面白いと思って頂けるよう、一層努力せねばと感じています。小野田風子(おのだ ふうこ)1991年生/日本学術振興会特別研究員(京都大学)/スワヒリ語文学主要業績:「スワヒリ語詩の社会志向性──19世紀初頭モンバサの詩人ムヤカ・ビン・ハジに着目して」(『アフリカ文学研究会会報MWENGE』第45号、1-45頁、2020年)●ひとこと:スワヒリ語詩の発展史に関心をもっていましたが、現在はコロナ禍で資料収集に苦慮しています。今後は、現地に行かずとも調査の可能な、SNS等のデジタル空間におけるスワヒリ語の表現や、スワヒリ語ポップスの歌詞にも着目していきたいと思っています。河野正治(かわの まさはる)1983年生/東京都立大学、AA研共同研究員/文化人類学、オセアニア研究主要業績:『権威と礼節──現代ミクロネシアにおける位階称号と身分階層秩序の民族誌』(風響社、2019年)●ひとこと:ポーンペイ島の首長から称号を授かるなど、私自身も島民と首長の「負う−負わせる」関係に巻き込まれながら調査研究をしてきました。今後もこうした負目をめぐる問題に取り組みつつ、権威や承認といったトピックについても深めていきたいと考えています。黒木英充(くろき ひでみつ)1961年生/AA研、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター(併任)/中東地域研究主要業績:Human Mobility and Multiethnic Coexistence in Middle Eastern Urban Societies 2(編著、AA研、2018年) ●ひとこと:内戦終了後4年経った1994年9月に初めてレバノンを訪れてから、何度も更新したパスポートには、合計104個の入国スタンプが付きました。今でも、最初に訪れたときに3週間続いた不思議な興奮状態を忘れることができません。合地幸子(ごうち さちこ)1966年生/東洋大学アジア文化研究所客員研究員/インドネシア地域研究、文化人類学主要業績:「老親扶養をめぐる規範を問い直す──インドネシア・ジャワにおける高齢者福祉施設を事例として」(速水洋子編著『東南アジアにおけるケアの潜在力──生のつながりの実践』京都大学学術出版会、151-179頁、2019年)●ひとこと:インドネシアでケアに関するフィールドワークをおこなってきました。現在は、日本で暮らすインドネシア人技能実習生がコロナ禍で受ける影響に関心があり、ケアという観点から課題の探求に取り組んでいます。酒井隆史(さかい たかし)1965年生/大阪府立大学、AA研共同研究員/社会思想史主要業績:『通天閣──新・日本資本主義発達史』(青土社、2011年)●ひとこと:貸し借りの論理から日本の前近代から近代への移行を都市を舞台にして再考できまいか、と考えています。佐久間 寛(さくま ゆたか)1976年生/明治大学、AA研共同研究員/文化人類学、アフリカ地域研究主要業績:Index de Présence Africaine par auteurs(1947-2016)(Présence Africaine, 2021)●ひとこと:かつてのフィールドが紛争地になって久しくなります。彼の地で負ったものをいかに返すか考えつづけています。関野文子(せきの あやこ)1991年生/京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程/地域研究(アフリカ)、生態人類学主要業績:「狩猟採集民バカの食物分配──過剰な分配とひそやかな交渉」(寺嶋秀明編『生態人類学は挑む SESSION2──わける・ためる』京都大学学術出版会、83-113頁、2021年)●ひとこと:すぐに戻れると思って後にしたフィールドを離れて、1年半が経ちました。今こそ研究成果をまとめるチャンスですが、どんな形であれ、現地の人に報告、還元してこその研究だとも感じます。対面的な交流の尊さを実感する日々です。髙松洋一(たかまつ よういち)1964年生/AA研/オスマン朝史、古文書学主要業績:“I. Mahmûd Döneminde Ayasofya Kütüphanesi ve Koleksiyonu”(In Hatice Aynur (ed.), Gölgelenen Sultan, Unutulan Yıllar: I. Mahmûd ve Dönemi (1730-1754), vol.1, pp. 308-357, Dergâh, 2020)●ひとこと:最初に私がヒルミーと知り合った時、彼は今の私よりも若かったことに気がついて愕然としました。彼の学識にはとても及びませんが、彼から学んだことを少しでも若い世代に伝えていければと思います。竹越 孝(たけこし たかし)1969年生/神戸市外国語大学/中国語学主要業績:『早期北京話珍稀文献集成・清代満漢合璧文献萃編』(共編、北京大学出版社、2018年)●ひとこと:一貫した関心は元・明・清代の中国語とアルタイ諸語との言語接触。近年は清代に刊行された満洲語と中国語の対訳会話教科書群を対象に、資料の翻刻とその言語の分析を進めている。箕曲在弘(みのお ありひろ)1977年生/早稲田大学、AA研共同研究員/人類学、フィールド教育論主要業績:『フェアトレードの人類学──ラオス南部ボーラヴェーン高原におけるコーヒー栽培農村の生活と協同組合』(めこん、2014年)●ひとこと:市場競争のグローバル化に対し、反市場主義的な立場ではなく、生活(livelihood)の論理に根ざした取引を志向する「生活市場主義」の立場から批判することを構想しています。渡辺健哉(わたなべ けんや)1973年生/大阪市立大学/近世中国史主要業績:『元大都形成史の研究──首都北京の原型』(東北大学出版会、2017年)●ひとこと:本文で述べたテーマとは別に、近現代日本において中国史がどのように研究されてきたのかについて、これから調べていきたいと考えています。王 柳蘭(Liulan Wang-Kanda)1971年生/同志社大学/文化人類学主要業績:「食と宗教──北タイに生きる中国系ムスリム」(谷川竜一・原正一郎・林行夫・柳澤雅之編著『衝突と変奏のジャスティス』青弓社、367-389頁、2016年)●ひとこと:普段は日本人の母の手料理を食べ、年中儀礼では祖父母たちに交じって台湾料理を味わってきた。食文化を含め、越境をめぐる自己と他者とのコミュニケーションを通して、コミュニティがどのように生成されるのかに関心がある。中国系キリスト教徒にも関心を広げている。28Profile

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