フィールドプラス no.27
22/32

*写真はすべて筆者撮影。20水田に肥料を撒く村の住民(2013年)。ジャワ農村部で暮らしてみる 日本には、赤ちゃんの誕生を祝い、その子の健康を祈願するお宮参りという行事がある。その時期は、性別や地域によっても異なるが、通常お宮参りはその子が生まれた土地を守っている鎮守の神が祀られている神社へ行くとされている。それでは、日本以外の国では子供の誕生をどのように祝うのだろうか。ここでは、私がインドネシアで行ったフィールドワークで体験した子供の誕生にまつわる儀礼を紹介しよう。 インドネシアの人口は約2億7千万人で、その約9割はイスラム教を信仰している。民族は300を超すと言われ、その中でもジャワ人が全人口の半数近くを占めている。私がフィールドワークを行ってきたのはジャワ島中南部に位置するジョグジャカルタ特別州で、歴史的に政治・経済の中心として栄えた古都として知られている。伝統文化継承の中心的な地域でもある。 私は主に、ジャワ人の生や死との向き合い方に関心をもっている。そこで、伝統文化が色濃く残るとされるジョグジャカルタの農村部での人びとの暮らしぶりを観察してみることにした。私が滞在していた村の住民は水稲作を主な生業としている。標高が高い地域で傾斜地に並ぶ棚田が美しい。イスラム暦とジャワ暦 日本では、平年では1年が365日、ひと月が30日または31日から成る12か月、1週間が7つの曜日から成るグレゴリオ暦が使われている。それに対して、ジャワ人は、グレゴリオ暦と同時に、1年が354日、ひと月が29日または30日から成る12か月で数えられるイスラム暦(ヒジュラ暦)と、1週間が5つの曜日(クリウォン、ルギ、パイン、ポン、ワゲ)から成るジャワ暦を使用する。例えば、自分の誕生日がグレゴリオ暦の水曜日フィールド ノート子供の誕生祝いインドネシア・ジャワのスラパナン儀礼合地幸子 ごうち さちこ / 東洋大学アジア文化研究所客員研究員インドネシアの民族であるジャワ人は、赤ちゃんが生後35日に達すると、髪や爪を切り、神聖な水で沐浴させる儀礼をおこなう。命の誕生を契機に行われるいくつかの儀礼の意味について考えてみよう。

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る