18ヴィクトリア湖マラウイ湖タンザニアドドマザンジバルダルエスサラームザンジバル、ストーンタウンの個人経営の書店。おもちゃや文房具も売られている。ダルエスサラームの大型商業施設内の書店。ダルエスサラームの街角にて。教科書、辞書、スワヒリ語のハウツー本と小説が売られている。読書習慣の欠如? 私は東アフリカの地域共通語であるスワヒリ語を大阪大学で専攻し、学部卒業後は同大学院でE・ケジラハビというタンザニアのスワヒリ語作家の研究を続けた。当初から大学図書館には、スワヒリ語研究の先達たちが収集したスワヒリ語の本が多数所蔵されていた。そのため、実際に現地に行かなくても研究対象には事欠かない一方で、自分が日本で手にしている本は現地でも手に入るのか、どんな人が読んでいるのかといった、本の社会的な側面については知りようがなかった。 アフリカでは、口承文芸が社会的に大きな存在感を示してきたこともあってか、読書の習慣があまり定着しておらず、それゆえに本もあまり売れないと言われる。一方タンザニアは、スワヒリ語がほぼ100%の人に通じ、識字率は約78%と高水準を誇る上に、スワヒリ語文学の中心地でもある。それでも、本は高価で、出版社の規模も小さく、人々は学業や職業上の必要に駆られたときしか読書をしないと指摘されてきた。現地の書店めぐり そこで私は、スワヒリ語の本の位置付けを把握するため、2016年と2017年に約一か月ずつ、タンザニアの大都市ダルエスサラームと、その近海に浮かぶザンジバル島のストーンタウンに滞在した。真上で照り付ける太陽のもと、人々に書店の場所を尋ねながら街中をバスや徒歩で移動して、本を手売りする行商人から、市場や道端の屋台、街角の個人経営の書店、大型商業施設内の書店まで、多種多様な販売の場を見てまわった。書店では売られている本の種類や値段に注目し、それぞれの場で多く取り扱われているジャンルの本を数冊ずつ購入した。書店をめぐり、様々な人々と話す中で、本と人との関係がおぼろげながら見えてきた。 大型商業施設内の書店は小ぎれいで日本のそれ*写真はすべて筆者撮影。小野田風子 おのだ ふうこ / 日本学術振興会特別研究員(京都大学)本屋スワヒリ語のハウツー本タンザニアの書店めぐりで見つけたもの読書習慣があまり定着していないと言われるアフリカ。スワヒリ語が話される東アフリカの国タンザニアで、書店をめぐり、人々に最も身近なハウツー本から、本と人との関係性を探った。
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