塔城峨眉山扶綏金華山研究対象のオスたち。顔や体の特徴をもとに一頭一頭を見分けて名前を付けていく。上段左:クラニイ、上段右:コール、下段左:ハンス、下段右:リベリ。山の中を自由に歩き回るサルに一日中ついて歩き、彼らの行動を記録する。会関係に集中してきた。その一方で、同じ個体を継続して調査することが困難なこともあり、オスについての研究は、十分に進められてきたとは言い難い。金華山は島という閉ざされた環境のおかげで、群れを出た後もオスを長期的に観察することができる。このような地の利により、続けることができた研究の一端を紹介したい。 ニホンザルの野外調査 最近では、霊長類の野外調査でもDNA解析のような分子生物学的手法やホルモン分析といった生理学的手法等、実験室でのラボワークと組み合わせて行うことが珍しくない。そのような潮流の中、私の調査はごくシンプル。双眼鏡とペンと小さな記録用のノートがあれば十分で、あとは体力勝負である。 調査は、ニホンザルを顔や体の特徴で一頭ずつ見分けて名前を付ける個体識別からスタートする。サルの顔なんて見分けられるのかとよく聞かれるが、実はこれは誰でもできるようになる。ここに挙げたのはすべて、私の調査対象のオスたちである。こうして並べて見比べると、何となくだが、みんなそれぞれに顔が違って見えると思う。顔が違う、ということが分かったあなたは、調査を始めることができる。あとは一頭一頭、より細かく観察して違いを覚え、名前を付けていけばいい。そうして対象となる個体を見分けたうえで、一日中サルの後をついて山の中を歩き回り、誰と誰の仲がいいのか、誰がけんかをしてその結果、誰に勝ったのか、そういったサル同士のやり取りを記録していくことで、その社会関係を明らかにしていく。 宮城県24
元のページ ../index.html#26